特定原子力施設監視・評価検討会第61回会合傍聴メモ

特定原子力施設監視・評価検討会 第61回会合 2018年7月6日 10時~12時30分

同検討会の第61回会合を傍聴しました。

この会合には毎回、技術者の T. M. さんと一緒に傍聴していますが、今回は、いつも傍聴メモを作成してくれる T. M. さんが不在のため、高橋が代わりにメモを作成しました。しかしなにぶんにも科学技術の世界とはまったく無縁のド素人であることから、議論の中身についてよく理解できなかったことも少なくありません。それゆえこの傍聴メモもきわめて不十分なものであることをご承知おきください。なお、検討会の議論についてより正確かつ詳細に知りたい場合には、原子力規制委員会のウェブサイトで会議映像と議事録が公開されているのでそちらをご覧ください。

http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/

「特定原子力施設」とは、深刻な事故を起こしたために30年以上の長期にわたって国が管理する原子力施設のことです。東京電力福島第一原子力発電所は2012年に特定原子力施設に指定されました。これにより、国(原子力規制委員会)は東京電力に対して安全確保とリスク低減の実施計画を提出させ、「特定原子力施設監視・評価検討会」を随時開催して作業の進捗状況を監視・評価することになりました。評価・検討会はほぼ2ヶ月に一度のペースで開かれています。

今回の検討会の議題は以下の通りです。ご覧のように盛りだくさんの内容でした。

(1) 東京電力福島第一原子力発電所中期的リスクの低減目標マップを踏まえた主な検討指示事項の対応状況について
(2) 建屋滞留水等処理の進捗状況
(3) 3号機燃料取扱設備クレーンの不具合原因調査状況
(4) 雨水流入対策の進捗状況
(5) 地震・津波対策の進捗状況
(6) その他
・2号機原子炉建屋西側外壁の開口設置について
・ERSS(緊急時対策支援システム)へのプラント情報伝送の復旧計画
・福島第一原子力発電所の放出管理、モニタリングの状況

議題が多かったことから説明役の東電出席者の数も多かったです。以下、傍聴メモです。

議題1.東京電力福島第一原子力発電所中期的リスクの低減目標マップを踏まえた主な検討指示事項の対応状況について

「中期的リスクの低減目標マップ」というのは、福島第一にいは現在どのようなリスクがあり、その低減のためにどのような取り組みが必要なのかを原子力規制委員会が一覧表の形でまとめたもの。ほぼ半年に一回のペースで改訂されてきた。

規制委員会はこの「中期的リスクの低減マップ」に示されている項目毎に東京電力がスケジュールを明確にし、実施状況を報告することを求め、前回の第60回検討会(5月18日開催)において東京電力は報告を行った。今回はそれ以降、進捗が見られた項目(資料で下線が引かれている部分)について東京電力の伊藤が報告した。

なお、特に「燃料デブリの空冷化」については、増田(東京電力)が、空冷化によって想定される影響についての検討状況を補足資料にもとづいて報告した。

伊藤、増田両氏の説明を受けて以下のような質疑があった。

山本(外部専門家):注水量の逓減と温度・ダスト放出の相関を見ることが必要である。またどのように進捗管理をするのか?

今井(規制庁):ガントチャートなど進捗状況が一目でわかるような表記に変えたい。

小野明(廃炉推進カンパニー最高責任者):ガントチャートの形で示したい。また、廃炉について、どのような手順で進めるのか、全体的な計画を検討し始めたところである。

高坂(外部専門家):冷却する際の冷却水の行き渡り、分布が重要だ。これについても項目として入れてほしい。

山形(規制庁):空冷化だが、空冷化そのものが目的なのではない。そもそもの目的は原子炉建屋の地下の滞留水をどうするのか、ということであり、あくまでも一つの方法として空冷化の可能性について検討してくれということだ。

最後に規制庁の今井事故対策室長からコメントがあり、(1)対応時期が示されていない。スケジュールを明確に示すこと、(2)当初計画よりも遅れる場合は遅れが見えるように記載することとの注文がつけられた。

議題2.建屋滞留水等処理の進捗状況(資料2-1)

議題 2-1 フランジ型タンク(非溶接型タンク)で貯留しているストロンチウム処理水の処理状況

小林(東京電力)が、フランジ型タンク(非溶接型タンク)で貯留しているストロンチウム処理水の処理状況について説明した。それによると、前回の報告時(2017年10月30日開催の第56回検討会)から、運用中タンクの数は73基から57基へ減少し、放射性物質量は約60%減となった。また、すべての浄化処理が完了する時期は、計画より遅れて11月頃になると報告した。

この報告を受けて以下の質疑が行われた。

議論は主として計画よりも遅れた理由について行われた。

高坂(外部専門家):フランジ型タンクに処理水が入っているのは非常に危険であり、計画の遅れは遺憾だ。汚染水を処理する多核種処理設備(ALPS)には既存のALPS、新設のALPS、高性能ALPSがあるが、稼働率が非常に低い。フル稼働すれば当初計画よりも早く終わるだろうと期待していた。アルプスの稼働率を上げるための検討はしていないのか。

小林(東京電力):水漏れなどいろいろなトラブルがあった。処理量を増やす計画である。

今井室長からコメントから以下のコメントがあった。(1)処理計画が遅れた理由を明確にすること、(2)バックアップ体制を検討すること、休止している構成のALPSの活用を検討すること。

山形(規制庁):なぜ高性能アルプスがメインになっていないのか?

小林(東京電力):処理量を調整しやすい既設と新設のALPSを使った。

山形(規制庁):使いにくい高性能アルプスを作ってしまったのか。(傍聴席から失笑)

梶山(東京電力廃炉推進カンパニー・バイスプレジデント):高性能ALPSはバックアップに使う計画である。

小野(東電プレジデント):高性能ALPSを導入した時期には処理量を重視したが、状況が変わった。

[所見:小林(東京電力)が行ったスケジュールの遅れについての説明がきわめて曖昧だった(ALPSの稼働率の低さに触れなかった)ことが高坂(外部専門家)の質問で明らかになった。規制庁側は、東電の立てるスケジュールがともすれば明確でないこと、またスケジュールが遅れた場合その説明がはっきりしないことに少々(かなり?)苛立っているように見えた。]

議題 2-2 1・2号機山側サブドレンのトリチウム濃度上昇に対する対応状況について

都築(東京電力)が説明した。それによると、トリチウム濃度の上昇は、汚染源のある排気筒を通じて雨水が地盤に浸透し拡散したことによると想定している。対策としては地盤改良をして拡散を防止することを考えている。

山形(規制庁):原因分析は本当に正しいのか。また、もしもそれほど拡散していないのであれば、トリチウム濃度の濃い滞留水を抜き取って建屋に持って行くこともことも考えられる。どうも目先のことに頭がいっている。一番の目的が何なのかということをまず考えてほしい。建屋の滞留水をなくしていくこと、これが一番の目的だ。

梶山(東電バイスプレジデント):われわれは拡散防止をまず第一に考えたい。

山形(規制庁):根本的に理解が違う。

議題 2-3 建屋滞留水処理の進捗状況について

徳間(東京電力):建屋滞留水の水位を低下させ、2020年までに床面を露出させるための作業を進めている。

高坂(外部専門家):3号機リアクタービルの滞留水の濃度が高いことが懸念される。

山形(規制庁):建屋内の滞留水の濃度は告示濃度の10万倍から100万倍である。われわれはこれが建屋から出ないようにすることを一番の目的としている。告示濃度以下のものについてはわれわれは問題にしない。全体の中で何がいちばんリスクが高いのかを考えて計画を作ってほしい。

今井(規制庁):建屋滞留水処理の詳細なスケジュールを示してほしい。

山形(規制庁):ALPSがフルに動けば一日で2,000立米の処理ができる。滞留水が50,000立米あるとすれば、単純に計算して25日で処理できるはずだ。それが2020年までかかるというのはどうしてなのか。もっと早くできるのではないか。どういうギャップがあるのかをはっきりさせてほしい。

議題3.3号機燃料取扱設備クレーンの不具合原因調査状況(資料3)

中川(東京電力):2018年5月11日、クレーンに不具合が起きた。調査の結果、制御盤に異常が見られた。この異常が起きたのは、日米の電圧の違いを考慮せずに機器のパラメーターを設定したためであることが分かった。

蜂須賀(大熊町商工会会長):今の説明は人ごとのように思える。電圧の違いを考慮しなかったというのはきわめて初歩的なミスだ。現場において業者任せ、下請け任せにするのではなく、しっかりと協力していくことが重要ではないか。

小野(プレジデント):今回の最大の問題は原因究明の甘さにある。当初不具合が起きた段階で原因究明をしっかりやっておけば4月以降のトラブルは起きなかったはずである。

議題4 大雨時の建屋への雨水流入対策の進捗状況

大津(東京電力):2018年の台風期に向けて、(1)サブドレンの鑑定稼働に向けて処理能力の向上を図る、(2)大雨時の建屋への流入経路となりうる箇所について対策を実施する、(3)建屋への流入経路調査を継続して実施していく、といった対策を実施している。

南山(規制庁):3号機タービン建屋の屋根損傷部について今年度に何をやるのかが見えない。

梶山(バイスプレジデント):早く閉めたいが、段取りが多い。

高坂(外部専門家):3号機の屋根は応急措置でもいいので何か手を打ってほしい。

議題5 千島海溝沿いの地震に伴う津波対策

増田(東京電力):超巨大地震が切迫している可能性が高いことから対応を検討してきた。

高坂(外部専門家):海水が入ってきて滞留水がまた増加してしまうことがないように対策をしっかり立ててほしい。

蜂須賀(大熊町商工会会長):防潮堤の建設は考えていないのか。

小野(プレジデント):検討を始めていきたい。

[所見:規制庁側は、東電の計画でともすればスケジュールが明示されないこと、またスケジュールの遅れの説明が不十分であることに苛立っているように見えた。また課題の優先順位についても規制委と東電の間で理解にギャップが見られた。田中座長は以前より発言は増えたものの、ほとんどが他の委員の発言のくりかえしに過ぎないもので、ホームループでの学級委員の司会(「何か意見ありませんか?」)の域を大きく出ていない。]

以上

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