特定原子力施設監視・評価検討会60回会議傍聴メモ

特定原子力施設監視・評価検討会の第60回会議が2018年5月18日に開催されました。

会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらをご参照ください。また、会議の映像も配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。

http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/

以下は、かつて福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、あくまでもT.M.氏が重要と判断したものを編集したものです。

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開会に際し、田中委員から、東電廃炉推進カンパニーCEOが増田尚宏氏から小野明氏に交代したとの紹介があった。(注:増田氏は東京電力ホールディングス副社長に昇任。小野氏は福島第一原発前所長)

議題1.東京電力福島第一原子力発電所中期的リスク低減目標マップを踏まえた主な検討指示事項の対応状況について

1.伊藤(東京電力)が、資料1「リスクマップの検討指示事項に対する対応状況について」に基づき説明を行った。規制委指示事項を、①スケジュール明確化事項、②実施時期未確定なもの、③実施の可否を含めて検討のものの三種に分けて表示し、②、③について説明した。

この説明を受けて以下の質疑が行われた。

(1)②-14:ALPS処理済水の処理について

高坂(外部専門家):タンク容量の説明(p.7)を見ると余裕もある。海洋放出は慎重にしてほしい。

比良井(エネルギー庁):ALPS処理水の問題は国の小委員会で、社会的影響や風評被害の問題を含め現在検討中である。地元と東京で公聴会を企画している。

山形(規制委員会):東電はトリチウムを含んだ処理水をどうするかについて当事者として「意思」を示すべきだ。規制委は「海洋放出・等」と意思を明確にしている。東電はどうか。国の小委は有識者から意見をいただく場であり、意思決定の場ではない。明確な結論が出ないまま時間だけが経過する恐れがある。時間経過は「災害」の要因だが。

小野(東京電力):東電は国の決定に従う。P.7で示されているタンク容量には天候上の不測の事態も考えられ、余裕があるとの結論にはならない。

比良井(エネルギー庁):国・小委員会の主催者として、地域や社会のへの影響も考慮する。

田中(原子力規制委員):東電は事業主体として、議論に参加して欲しい。

(2)②-2:地下水制御について

高坂(外部専門家):「サブドレンでの流入抑制」とあり、陸側凍土壁の継続に触れていないのは何故か。

有馬(東京電力):当然凍土壁効果の継続は織り込んでいる。「サブドレン」を特記したのは建屋雨水の回収を意識したためだ。

(3)②-11:検討用地震動への対応方針

高坂(外部専門家):サプレッションチャンバの脚部補強について、コンクリ打ち込みだと汚染物増加になる可能性がある、地下水位との逆転の恐れもある。

鈴木(東京電力):グラウト充填にはデメリットもあり、脚部強度を相対的に上げるために「水抜き」の可能性も検討している。

(4)その他

山形(規制委員会):全体の問題を整理されているが、個別には問題が多い。説明の無かった分類①でも個別の説明が必要。特に①-1:地下水流入抑制」については今後とも重要な課題だ。

小野(東京電力):確実に実施する。

山形(規制委員会):これまでも台風や大雨で目標未達が何度もあった。

高坂(外部専門家):(a)①-15:3号機からの使用済み燃料取出しは4号機とは環境条件が著しく異なる。健全性確認後に説明が欲しい。(b)15.5m津波対策で、3号機は実施するが空の4号機は無施工というが、3-4号機間には同通箇所がある。これをどうするのか。(c)メガフロートの活用に関連して、沿岸壁が海側に傾いていて対策が必要だと聞く。状況の説明が欲しい。

今井(東京電力):それぞれ検討中の段階である。逐次報告したい。

(所見:規制委が整理した3分類45項目のうち、2分類19項目について東電が進捗報告をしたが、あまりに簡略な報告で規制委にも理解が届かなかったようだ。今後は、進捗のあった個別課題の詳細な報告が必要だろう。特にALPS処理済水の処置に関しては、検討会前主査の更田委員が「海洋放出を軸に東電の当事者責任」を示唆していたのに対して、東電のCEOも交代して「国の決定に従う」と姿勢を変えており、今後更なる迷走が予想される。)

 

議題2.原子炉格納容器内部調査及び燃料デブリ取り出しに向けた対応状況

1.資料2−1(2号機)及び2-2(3号機)を久米田(東京電力)が説明した。2号機ではX-6ペネからカメラを挿入してペデスタル底部状況を観察した(2018年1月)。3号機では、2017年7月に撮影したものをSfM(Structure from Motion)による3次元データによりペデスタル全体の状況を復元した。今後、小規模取出しから大規模取り出しに計画を立案する。

この報告を受けて以下の質疑があった。

山本(外部専門家):2号機PCV内部調査は可視光調査に限られているようだが、サーモグラフィや赤外線調査の計画はあるか。

久米田(東京電力):検討している。

今井(規制委員会):出せる情報は早急に提出して欲しい。審査上のリスクになる。

小野(東京電力):p.25の「小規模取出し」は東電が検討中の事項で早急にまとめたい。

熊谷(規制委員会):「取出し物」が「固体廃棄物」なのか「核廃棄物」なのか、定義によって「保管・管理」の基準が異なる可能性がある。

高坂(外部専門家):1号機のペデスタル内部調査が行われていない理由は何か。

久米田(東京電力):1号機x-6ペネ周辺線量が高く、x100Bで調査を計画している。

比良井(エネルギー庁):2021年デブリ取出しに向け「分布、アクセス、安全性」の情報を収集中である。

鈴木(東京電力):「取出し、保管」について規制庁の判断を伺うことになる。

高坂(外部専門家):「核燃料」が関係するなら位置情報も含め慎重な対応が必要である。

鈴木(東京電力):今のカメラでは精度に問題がある。対応は今後の検討課題である。

田中(規制委員):サンプルの質・量について東電情報から判断することにしたい。

(所見:本件は東電主体の実施事項で規制委との間に情報格差がある。実施計画の提出と検討の今後を見守りたい。)

 

議題3.排水路の放射性物質濃度低減

1.資料に基づいてを白木(東京電力)が説明した。排水系で高線量のK排水路(原子炉建屋西側)について、汚染流入要因の屋根・建屋周辺・法面で低減対策を実施した。低減効果は認められたが、降雨時には線量上昇傾向は残っている。

 

この報告を受けて以下の質疑が行われた。

高坂(外部専門家):敷地北西部に廃棄物減容化設備が設置されているが、排水対策はどうなっているのか。

有馬(東京電力):設備毎に周辺排水路を設置してモニタリングして排水している。

今井(規制委員会):p.8にあるタービン建屋の雨水浄化設備は豪雨時に対応可能か。2、3号機への浄化設備設置の計画はどうなっているのか。

有馬(東京電力):通常の大雨には対応可能だが。2、3号機については降雨量計測中であり、その結果により浄化装置仕様を決定する。

(所見:K排水路は原子炉爆発による高線量瓦礫を直接受けると共に、屋根や路面の汚染の影響を長時間受けている。事態の安定を待って、原子炉周辺排水路の基本仕様について検討項目を整理する必要を感じる。)

(総括所見:今回はALPS処理済み水の処分について、規制委員会と東電の間の認識の差が顕わになった。一方、デブリ取り出しに向う作業については現場を統括する東電の姿勢が規制委をリードしている感があったが、核廃棄物処理の規制の確立に向けて規制委と専門家の協力による一種の Feasibility Study が必要ではないか、と感じた。)

以上

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