特定原子力施設監視・評価検討会台59回会議傍聴メモ

特定原子力施設監視・評価検討会59回会議が2018年3月30日に開催されました。

会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらをご参照ください。また、会議の映像も配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/

以下は、かつて福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、あくまでもT.M.氏が重要と判断したものを編集したものです。
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議題1.東京電力福島第一原子力発電所中期的リスク低減目標マップの改訂について

資料1に沿って、今井(規制委員会)が改定案素案を説明した。この素案は、前回の検討会後に行われた規制委内会議(3月7日)を経て作成されたものである。

提示された改定案素案は以下の3案である。

1.中期的リスクの低減目標マップ{平成30年3月版)

横軸にリスク主分類(液体放射性廃棄物・固体放射性廃棄物・使用済燃料プール・地震・津波・環境への負荷低減・廃炉・施設内調査)を、縦軸に時間を表示し、リスク源とその低減作業状況を着色表示する方式(資料1−1)。なお「資料1−1」では開始年が2018年となっている。2015年以降のマップについては参考資料「参考3」を参照。

2.施設を東西に断面表示し、設備とリスク箇所を高低を含めて図示するとともに、リスク低減を着色表示する方式。2018年初頭と2020年度末を提示している(「参考1」を参照)。

3.号機毎に、縦軸にリスク事項、横軸に時間軸を配したガントチャート方式(参考2を参照)。

以上3案を踏まえた「検討指示事項」を(資料1−2)にまとめた。意見と審議をお願いしたい。

この説明を受けて以下の質疑が行われた。

山本(外部専門家):リスク低減マップは適切に改訂されたと思う。非常に分かりやすく、役立つ物になった。

以下の点についておたずねしたい。

第一に、検討指示事項(資料1-2)について規制庁と事業者の間に齟齬はないか。

第二に、リスク・マネージメントの管理目標が必要になるのではないか。例えば、現在は敷地境界線量(1mmSv/Y)が目標としてあるが、今後デブリ取り出しなどの作業をしていく上で管理目標として他に何か設定する必要があるかどうか。

松本(東京電力):一点目については ドラフト段階からマップ検討に参加しており、齟齬はない。「検討指示事項」についても、われわれが考えているものと全般的に同じだ。ただ、一部の項目については優先順位などで検討すべきものがあるのではないか。例えば、燃料棒の取出し後の燃料プールの水の抜き出し(資料1−2の4項)については、早く抜いた方がいいのか、あるいはデブリ取り出しの際に再利用するのかについて検討したい。

二点目については、今のところ1mmSv/Y以外に管理目標のイメージがない。

蜂須賀(大熊町商工会会長):震災後7年が経ったが、地域住民には不安に思えることがある。第一に、現在の仮設の防波堤は津波がきても本当に大丈夫なのか。第二に、凍土壁はいつまで通電使用するのか。

松本(東京電力):防波堤については、再稼動して運転するというのであれば大補強が必要である。現在の福島第一については、原子炉内に大爆発するような大きなエネルギーは存在していない。その場合、防波堤がいいのか、それとも別の対策の方がいいのか、検討が必要である。凍土壁については、停電が発生しても長時間凍結を維持できるし、その後の対策も出来る。

蜂須賀(大熊町商工会会長):私の説明では地域住民は納得しない。東電から直接説明して欲しい。

松本(東京電力):そのように努めていく。

高坂(外部専門家):資料1−2に「指示事項」とあるが、指示を出すのか。

今井(規制委員会):事業者との協議の上、「指示事項」にすることを考えている。

高坂(外部専門家):凍土壁やサブドレンの設備などは長期的に維持していかなければならない。こうした建物の保全や具体的な見直しについてどこかに項目を追加して欲しい。

高坂(外部専門家):資料1-2の14項に「多核種処理設備処理水の規制基準を満足する形での海洋放出等」とあるが、このことについて福島県としては納得していない。どのように取り組むのかについての方針を決める必要がある。

橘高(外部専門家)資料1-2の18項にある「建屋劣化」に関して、放射線による劣化や熱の影響など建物の健全性を評価することが必要である。

松本(東京電力):外壁などの強度については測定しているが、放射線量が高い内部については類推になっている。

議題2.地下水及び雨水流入対策の現状

(東京電力)が資料2「地下水及び雨水流入対策の現状」に沿って説明した。

昨年10月と今年2月に、建屋流入水量が屋根損傷部からの雨水流入では説明できない事例が発生した。

調査の結果、10月発生分については、1、2号機においては雨水排水トレンチからの流入、3号機においては屋根からの雨水流入範囲が予想を超えたことが原因であることが判明した。

また本年2月の無降雨時の流入量増加はK排水路の工事に伴う通常排水の逆流が原因であると特定できた。

この説明を受けて以下の質疑が行われた。

徳永、高坂(外部専門家):、地下水サブドレン水位(5,000mm)からの流入はないか。またK排水路の流量(1,500㎥/D)を考えると、今回の逸流以前に対策が必要だったのではないか。建屋周りの止水が重要であり、しっかりとやって欲しい。

(東京電力):今後評価、検討したい。

所見:K排水路は以前から汚染を含めて問題になっている。1,500㎥/Dはかなり大量であり、資料15ページにあるように土嚢を積んで工事するなら仮設バイパスを作るのが普通であろう。東電は「逆流」として現象を説明していたが、排水路流入についての事前対策が不備で、委員からは「逸流」と不作為の結果として表現していたように私は理解した。)

議題3.地震・津波対策の進捗状況(資料3)

小林敬(東京電力)が「除染装置スラッジ対策の検討状況」と「メガフロート対策の検討状況」について、増田(東京電力)が「3.11津波及び検討用津波対策の検討状況」についてそれぞれ資料に沿って説明した。

この説明を受けて以下の質疑が行われた。

高坂(外部専門家):新たな「スラッジ抜出し設備」については、高線量物の屋外処理となるので安全対策に配慮して欲しい。メガフロートの開渠着床の理由と効果は何か。原子炉建屋の残留水の汚染量を知りたい。

小林敬(東京電力):スラッジ抜き出しについては、安全対策を設計段階で検討中である。メガフロートについては、これを貯水設備から人工地盤として有効活用することにする。開渠面積が狭くなることにより汚染が濃縮され、除去の可能性もある。

増田(東京電力):原子炉建屋の残留水の放射性物質量は10E13ベクレルのインベントリーを想定している。

熊谷(規制委員会):メガフロートは貯留設備として登録されているが、港湾設備に変更するのか。

小林敬(東京電力):規制委員会に御相談する。甲板上は車両・重機のヤードに利用したい。

議題4 その他(1)

小林靖(東京電力)が、1号機オペレーティングフロアのガレキ撤去の進捗状況について、「資料4−1」に沿って説明した。また小林敬(東京電力)が、建屋滞留水のポンプピット等の残水の扱いについて、「資料4−2」に沿って説明した。

この説明を受けて以下の質疑が行われた。

田中委員高坂(外部専門家):ポンプピットの滞留水線量と漏洩の有無が問題である。

小林(東京電力):外部との貫通構造は無い。4号機は調査が可能である。

高坂(外部専門家):ガレキ撤去作業による線量上昇が心配である。また壁面鉄骨除去が壁面保持に与える影響についても留意して欲しい。

小林靖(東京電力):」構造材への影響は慎重に配慮する。

山本(外部専門家):1号機オペフロは「水素爆発」の現場であり、今後の検証のための記録を残して欲しい。

小林(東京電力):写真撮影など記録保持に配慮する。

田中委員:実施計画検討の際に検討したい。

議題4 その他(2)

今井(規制委員会)が、資料4−3「放射線管理等報告に関する関係規定の見直しについて」に沿って説明した。

これについて田中委員から「3月14日の規制委員会で検討した結果を説明した。今後パブリック・コメントで意見を聞くことになる」との発言があった。

(総括所見:年度末ということで開かれた感のある会議だった。「リスク低減目標マップ」の説明の中で「放射性廃棄物検討会」についての言及が何度かあったが、同じ田中委員が主査を務める同検討会は昨年7月の第6回を最後に開かれていない。1F内にある放射性物質を含む全ての物質の、現状形状・物量、核種・総線量・状態の安定性(気・液・固etc.)、作業による変化、などの総括表を作るとすれば同検討会の役割であり、今後の経緯を見守りたい。また、蜂須賀委員の発言のように、地元民に「リスクの実態を平易に告知する」と言う姿勢が7年を経て薄れているようにも感じる。)

以上

カテゴリー: 02 滞留水・汚染水の状況, 03 放射線量低減・汚染拡大防止, 04 使用済み燃料プール, 05 燃料デブリの取り出し, 06 固体廃棄物の保管・処理・処分, 08 要員計画・作業安全確保, 21 トピック パーマリンク