特定原子力施設監視・評価検討会57回会議が2017年12月26日に開催されました。
会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらをご参照ください。また、会議の映像も配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/
以下は、かつて福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、T.M.氏が重要と判断した議論を編集したものです。
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議題1.建屋滞留水処理の進捗状況
小林敬(東京電力)が資料1に沿って説明した。それによると、2号機から4号機のタービン建屋において、最下層中間部の床面を露出させた。低い仕切り堰があり、5ヶ所の残水部がある。3号機から流入する滞留水の放射線量が高く、全体の線量を押し上げている。
この説明を受けて、以下の質疑が行われた。
山本(外部専門家):原子炉建屋(R/B)、廃棄物処理建屋(Rw/B)、タービン建屋(T/B)間の排水流路は想定できているか。流路によっては建屋隅部の高濃度水(固形物を含む)が終末段階で流入してきたこともありうる。
松本、小林(東京電力):そのことは想定しているが、正確な流路(濃度)は確定できていない。
橘高(外部専門家):資料20ページの測定によれば固形物の影響は少ない。21ページの直近数ヶ月の線量増加の要因は何か。
今井(原子力規制庁)3号機からプロセス主建屋への流入水線量が高い(p. 14)とする理由は何か。
小林(東京電力):事故当時2号機は損傷が大きく、放射性物質は初期に拡散したが、3号機は損傷程度が小さく内部に放射性物質が残っていた可能性がある。
山形(原子力規制庁):12ページでセシウム及びトリチウムの濃度が一桁上昇しているのに、ストロンチウム90の濃度だけが数分の一しか上昇していない理由は何か。
小林、徳間(東京電力):検討中である。初期濃度の影響と考えられる。21ぺーじにある2015年3月31.時点の放射性物質量(6.5E15ベクレル)は現下からみてもっと高かったとも考えられる。
(所見:タービン建屋(T/B)の滞留水処理は終末段階に達している。事後への情報として放射線(液体、固形物)の初期からの経緯を整理して過酷事故の際の処理プロセス設計の参考資料として残したい。)
議題2.地下水流入対策の現状
都築(東京電力)が資料2に沿って、サブドレンと凍土壁の運用現状、10月の台風21号、22号の際の降雨と水処理の状況について説明した。また全体としての水位管理計画について説明した。
この説明を受けて、以下の質疑が行われた。
橘高(外部専門家)台風事象も含め建屋エリア(凍土壁内)の雨水浸透防止が必要だが。
松本、都築(東京電力):凍土壁内海側には35ページに見るように構造物が多い、また3号機の原子炉建屋(R/B)屋根部損傷も大きい。雨水を建屋内に入れない方策を検討中である。
徳永(外部専門家):凍土壁が完成しているなら降雨対策も単純化できるのではないか。
都築(東京電力):今回の台風ではTP(海抜行動)2.5m盤(海側鋼管壁の西側)から14,000㎥を汲み上げ、うち6,100㎥をタービン建屋に移送した。サブドレン能力が1,500㎥/Dになれば、各々8000㎥、1700㎥になり降雨対策・台風対策は大幅に改良される。
山本(外部専門家):凍土壁の工事は完了したと判断してよいのか
都築(東京電力):工事は完了したが、西③周辺の温度低下は継続監視が必要である。
高坂(外部専門家):2.5m盤の汲み上げで汚染水が増えることになっては困る。
松本(東京電力):地下水位は順調に下がっており、サブドレン作業者から「地下水は枯れてきている」との声もある。
今井(原子力規制庁):雨水・清浄地下水を汚染水に組みこむのかどうか基本方針はどうなっているのか。
松本(東京電力):)将来は分離処理するにしても、当面は二段階プロセスになる。
(所見:凍土壁の「凍結」と「止水」は同一の定義ではなく、その評価を不分明にしたまま地下水流入対策に苦心しているため説明が複雑になっている。)
議題3..燃料デブリ取り出し作業における安全確保の考え方
久米田(東京電力)が資料3に沿って、3号機原子炉格納容器内部調査結果及び2号機原子炉格納容器内部調査計画について説明した。また溝上(東京電力)が、廃炉作業における事故現場の記録管理について説明した。
この説明を受けて以下の質疑が行われた。
高坂(外部専門家):堆積物や付着物の採取までは調査に含まれないのか。
松本、磯貝(東京電力):調査機器のモックアップテストまで進んでおり、今回は不可能である。観察と現状変更では作業の基本的姿勢が異なる。
蜂須賀(大熊町商工会会長):「現場記録管理」の内容は今頃言い出すものなのか。41ージにある事故調査報告書が事故1年後に報告されたものなら、私から見ても不備が多い。溝上(東京電力):未解明問題については内部会議を継続開催している。事故直後の事態安定優先のために作業機材を廃棄してしまったものもある。
櫻田(原子力規制庁):「内部調査」と「記録管理」は別首題であり議題の設定に問題る。
松本(東京電力):内部調査の開始に当って「記録管理」についてもこの会議での議論が必要と考えた。考え方に異論もあろうが議論頂きたい。
(所見:「記録管理」について、当事者の進め方と規制委・有識者の認識と方法論に食い違いがあることが露呈した感じ。建設的な議論になるかどうか。)
議題4.東京電力福島第一原子力発電所中期的リスクの低減目標マップの改訂
今井(原子力規制庁)が資料4に関して、毎回添付の「リスク削減目標マップ」に「長期安定化を目指して必要な対策項目」を追加したものを素案として説明。
この説明を受けて以下の質疑が行われた。
山本(外部専門家):中長期の見直しなら、項目も記載順序も根本的に考え直すべきである。
高坂(外部専門家):「リスクと対策」なら提案したいことは多い。時間が欲し
橘高(外部専門家):「タンク容量削減目標」「凍土壁の経済性秤量」などの記述が必要である。
今井(原子力規制庁):次回検討会を2月上旬に考えているので、1月2週末までにメール等の手段で「考え方と項目」の連絡をいただきたい。
(所見:議題3の「記録管理」と合わせて、リスク低減への論理的な目標・課題の検討と文章化が必要との専門家の共通認識が示された。)
議題5.サブドレンNo.51の水位低下
幅野(東京電力)が資料5について説明した。
議題6.2号機原子炉格納容器ガス管理設備監視不能に伴う運転上の制限逸脱
二宮(東京電力)が資料6に即して説明した。
議題5及び6は作業時の管理ミスという共通項があり一体化して検討した。
蜂須賀(大熊町商工会会長):このようないわば「うっかりミス」がこの1年で何件起きているのか。地元への帰還者は増えているがとても「安全」とは言えない。
松本(東京電力):申し訳ない。繁忙を理由には出来ない。「福島は特別」という意識がルーチンの点検を甘くしているとも言えるのかも知れない。
山形(原子力規制庁):系統管理は通常の発電所で通常に行われている。
田中(規制委委員):作業に対する敏感な姿勢を現場に注入して欲しい。
(所見:3ヶ月で2回、同種事故が起きている。今回の「ガス管理設備」には30名の作業員が常駐している。それでモニタ弁の状況チェックが出来ていないというのでは「マニュアルによる作業管理」で解決できるとは思えない。)
議題7.1号機原子炉建屋瓦礫撤去の状況
小林靖(東京電力)が資料7に沿って説明した。オペフロの瓦礫撤去に向け、フェンス取り付けが完了した。飛散防止剤入り散水作業着手段階にある。2021年中に瓦礫撤去を完了する予定である。
この説明を受けて以下の質疑が行われたあ。
高坂(外部専門家):散水による対流水増加に留意のこと。
熊谷(原子力規制庁):飛散防止材は通常の100倍希釈でなく10倍希釈を使うのか。
小林(東京電力):ポンプと水量は管理計画がある。10倍希釈で1ヶ月有効と想定している。
櫻田(原子力規制庁):作業の気象条件と制限はどうなっているのか。
小林(東京電力):労働安全基準に準拠し、風速10m/sec及び降雨50mm/Dで中止する。
(所見:新しい作業の開始。対象物と作業環境によって変更は起こるだろう。)
(総括所見:田中委員に主査が替わって2回目の検討会。前任・更田委員が議論を引っ張って行く姿勢だったが、田中委員は東電と専門家・規制委の秤の中心にいる如き姿勢で、意見の交換・調整としてはありうる態度だと思うが、傍聴者としては支点で計量した「重さ」を知りたい。「廃棄物処理検討会」でも感じた「知らしむべからず」とも思える姿勢に疑問を感じる。)
以上