特定原子力施設廃棄物規制検討会第6回会議が7月25日(水)に開催されました。
会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらをご参照ください。また、会議の映像も配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_haiki/index.html
以下は、福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、T.M.氏が重要と判断した議論を編集したものです。
議題審議の前に、田中委員から双葉町商工会長・田中清一郎氏が外部専門家として参加する旨、紹介があった。
議題1 福島第一原子力発電所の固体廃棄物の保管管理計画
七田(東京電力)が、資料1「福島第一原子力発電所 固体廃棄物の保管管理計画 2017年度改訂について」に基づいて説明した。
2016年3月に公表した瓦礫等の発生量予測を見直し、また吸着塔類の廃棄発生分を追加した。瓦礫発生量は75万トンと大差はないが、減容後は16.4万トンと1.6万トン減少する。
吸着塔類については、2018年までにHIC(高性能容器)の発生量は直線的に増加する。合計7000基。
この報告をめぐって以下の質疑があった。
井口(外部専門家):デブリ取り出しに係わる廃棄物の増加はどのように見込んでいるのか。
松本・七田(東京電力):現在、手法を検討中(上から作業するのか、横から作業するなど)であり、見積もりの対象外である。高線量だが物量的には少ない。スリーマイル島の場合には100トンだった。アイダホの敷地内にある30m×30mほどのスペースに保管されている。福島第一の場合には事故を起こした原子炉が3基あり、500トンレベルの対応が必要になるのではないか。次回以降に見通しを報告したい。
井口(外部専門家):9ページのグラフによれば、HICは2018年まで直線的に増加しているが、そのように予測した根拠は何か?
七田:「安定化処理」はここでは見込んでいない。「安定化処理」が実用化すれば、HICの保管量は鈍化する。
熊谷(原子力規制庁):4ページの発生量処理の図で、前回提示よりも遅れが出ているのはなぜか。
七田(東京電力):焼却の順序の変更などが理由である。その結果、たとえば使用済み保護衣の一時保管が解消される時期が2021年から2016年へとずれている。
【所見: この検討会で最初から疑問に感じていることだが、廃棄物を重量で評価している。デブリまで対象を広げると線量評価が最重要になると思うが。】
議題2.水処理二次廃棄物の処理に向けた検討状況
浅野(東京電力)が資料2「スラリー、スラッジの安定化処理に向けた検討状況」に基づいて説明した。
液体状廃棄物の保管中のリスクを早期に低減するためには固体廃棄物化することが必要である。
スラリーには主としてALPSスラリー(約6000立方メートル)とAREVAスラリー(約600立方メートル)がある。このうち量的に多いのはALPSスラリーである。これを脱水乾燥して減容保管する。脱水乾燥の方法には加熱乾燥と加圧圧搾濾過の2方式があり、これまで比較検証を進めてきた。
以上の説明をめぐり以下の質疑が行われた。
稲垣(外部専門家):ALPSスラリー処理の2方式について、固体化した場合の放射線漏洩と発熱のリスクは検討しているのか。
浅野(東京電力):発熱・除熱は、炭酸塩・鉄共沈ともに想定している。
佐藤(外部専門家):ドイツでセシウム134含有スラリーを岩塩に混ぜて発熱安定試験を行った。
粉末を扱うことになる。ストロンチウム90(β)を含んだ高レベル廃棄物と考えるべきだ。容器の気密性が重要である。
浅野(東京電力):HICには焼結金属フィルターをつけている。気体は通すが粉末は通さない。気密容器についてはフィルターの選択も考慮する。
井口(外部専門家):ALPSスラリーとAREVAスラリー処理の差異と優先順位は? 15ページにある容器充填での減容効果は?
浅野(東京電力):AREVAは線量が高いが、量的に圧倒的なALPSスラリーを優先検討している。
17ページにあるように、乾燥処理での炭酸塩(8.4㎥)がドラム缶18本(一本あたり0.125㎥=2.25㎥)になり、1/3.7に減容されている。
佐藤(外部専門家):電気誘導で1600~1700℃に加熱処理する「ジオメルト」法もある。高温での無害化も検討に入れるべきではないか。
浅野(東京電力):現在、整理して検討している段階である。「安定した処理」が重要と理解している。
浅沼(外部専門家):リスク認識の観点から「固形化」を図ることはわかるが(資料4ページ)、固形化による放射線の拡散と発熱の可能性は否定できない。その場合には容器の選定・評価を慎重にすることが重要である。
16ページの「安定化処理設備のイメージ」について、除去した水分中の放射線をどう考えるか。HICを介さずにALPSから直接固形化するプロセスは考えられないか。
浅野(東京電力):容器選定にあたっての評価ポイントは検討中である。HIC経由の排除についてはご指摘の通りで、内部で議論している。
田中委員:AREVAスラッジは10m盤の建屋の中にあり、危険な状態だ。処理する場合にはここでするのか、それとも安全のためにひとまず35m盤に移送するのか。
浅野(東京電力):どこで固化するのが最適なのか、場所は未検討である。
山形(規制委員会):スケジュールは納得できない、AREVAスラッジは余震津波や漏洩危険性などを考えれば35m盤移送を今すぐにでも行うべきだ。4、5年も待てない。
松本(東京電力):監視・評価検討会でも(移送によるリスクも含めて)検討中である。次回までには結論を報告したい。
山形:8月末には、現在の場所で固化するのか、35m盤に移送するのか、二つに一つ、決めてもらいたい。
松本(東京電力):分かりました。
田中委員:AREVAの周辺は高線量であることに留意すること。
山形(規制委員会)ALPSスラリーについて、17、18ページのまとめを見れば、選定と概念設計着手にはそんなに時間がかからないのではないか。
松本(東京電力):検討事項も残っているが次回に報告する。
【所見:3ページの表を見ると「代表核種の濃度としてストロンチウム90を挙げ、AREVAスラッジはALPSスラリーと同程度としている。AREVAにはγ線のセシウムも含まれている筈で、評価軸の統一ということかも知れないが「隠蔽」を疑わせる。提案プロセスに対して専門家から放射線拡散と発熱について複数の疑問が示されたが、回答に的を得たものはなかったように感じる。】
議題3.可燃性廃棄物の追加火災対策の進捗状況について
七田(東京電力)が資料3「可燃性廃棄物の追加火災対策の進捗状況について」に基づいて、監視カメラの設置と保管エリアへの防火帯設置について説明した。
この説明をめぐる質疑は特に無かった。
今井(規制庁)から防災についての予防的体制の維持には今後とも留意して欲しいとの発言があった。
その他 田中委員の指摘で福島県関連出席者の発言が求められた。
田中(双葉町商工会長):熱心に議論され対策も出てきていることはわかった。双葉・大熊町民は避難解除に至らず、双葉だけで2万人が避難生活をしている。福島原発事故の収束まで先が見えない。そのことを念頭に対策を立てて欲しい。
河井(福島県原子力委員):議論に無駄があるわけではないが、将来像に確固としたものがないことが気にかかる。
【総括所見:東電・規制委・専門家それぞれがそれぞれの立場で意見を開示していたと思うが、基礎となる提出資料に放射線の核種と線量の記述がないことが(毎度のことだが)疑問に思う。古の治世論理に「由らしむべし、知らしむべからず」というテーゼがあったが、これが未だに生きているようにさえ感じる。】
以上