特定原子力施設監視・評価検討会54回会議(2017年6月28日)傍聴メモ
特定原子力施設監視・評価検討会の第54回会合が6月28日(水)に開催されました。
会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらをご参照ください。また、会議の映像も配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/
以下は、福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、T.M.氏が重要と判断した議論を編集したものです。
議題1.建屋滞留水における放射性物質量低減(資料1)
滝沢(東京電力)が「資料1−1:建屋滞留水処理の進捗説明」に基づいて、1~3号機の復水器、ホットウェル天板下の残留水など、タービン建屋の床残水処理を中心に状況説明を行った。
また、都築(東京電力)が、「資料1−2 地下水流入対策の現状」に基づいて、建屋への地下水流入について、陸側遮水壁(山側)の凍結止水の効果とサブドレン強化による水位制御の実態、および凍土壁閉合後の事態予測について説明を行った。
以上の説明を受けて、以下の質疑が行われた。
更田委員:1号機復水器のマンホールが開いたことは前進だ。2、3号機については天板下のアクセスが難しそうだ。汚染水を希釈して除去する可能性はあるか。
滝沢(東京電力):希釈は検討しているが、5~10回繰り返して行うことが必要である。天板切り欠き部からポンプまたはチューブを挿入して直接取水することを優先して検討している。また遠隔制御・遮蔽についても検討を行っている。
更田委員:スラッジなど事故直後の汚染の存在をカメラ調査で確認して欲しい。資料3ページ、「放射性物質量の推移」のグラフでは2016年前半まで滑らかな減少になっているが、これは推測値に基づいているからだろう。誤解を受けないよう、破線などに変更して欲しい。
高坂(外部専門家):凍土壁効果で地下水位が低下している。4号機タービン建屋の水抜きを急ぐべきではないか。
滝沢(東京電力):地下水流入減少効果で水位が前倒しで低下している。タービン建屋床面の油分の排除が必要である。
滝沢(東京電力):資料1−1(pp. 7-8)にあるように、CP配管トレンチと床ドレンサンプが連通している可能性がある。CP配管トレンチの汚染は床ドレンサンプよりも一桁高く、初期の汚染が淀んでいる可能性が考えられる。
更田委員:「建屋滞留水処理」の立則はなにか?。サブドレン能力か、それとも地下水位か。
滝沢(東京電力):床面露出にともなう油分処理が立則だと言える。
更田委員:資料1−2の8ページの図だが、この図も説明も誤りであり、強弁だ。なぜここに凍土壁が入ってくるのか。地下水制御はサブドレンの増強が資しているのは、7ページのグラフでのサブドレン稼動と水位の経緯を見ても明らかだ。凍土壁の効果ではない。
松本(東京電力):当事者としては凍土壁による地下水流入減少効果も示したかった。
山本(外部専門家):資料1−2の9ページ、「地下水収支(凍結前780t、現在580t/d)」の内容と、未凍結と凍結の割合はどうなっていりうのか。
都築(東京電力):雨水の半分は地下浸透によるものだ。凍結部も完全止水に至っていない。未凍結箇所「西側③」は今後凍結を開始する。
松本(東京電力):凍結が完了しても100~150t/dの地下水流入はあるだろう。
更田委員:油分処理を除いて建屋内水位低減が立則だろう。サブドレンに能力的余裕はあるが、時定数が大きく効果の現れ方は緩やかだ。
今井(規制委員会):油分分離はALPS処理の前提として必要なのか。
滝沢(東京電力):ALPS稼動の安定のために良い条件で処理したい。
(所見:サブドレン増強で水位の管理と低減に道筋が見えた。凍土壁について規制委は元来傍観的態度だった。西から東に向けての地下水流路に対して10mの実験凍土壁を建設し、500mの実プラントに取り掛かるのには無理があった(スケールアップファクター:50)。その過程での海水配管トレンチの凍結止水も(より難条件であったとはいえ)失敗してモルタル投入止水に変更している。沿岸立地原発のシビア・アクシデント対策としての凍土壁はプロセス設計の変更が必要だ。)
議題2.1号機原子炉建屋オペレーティングフロア調査結果(中間)について(資料2)
徳森(東京電力)が1号機建屋カバー除去とダスト飛散対策について説明した。またオペフロ内の設備状況とウエルプラグ周辺の線量計測結果について報告した。
この説明を受けて以下の質疑が行われた。
梶本(日本原子力研究開発機構):資料2の24ページの「オペフロ粒径分布測定結果」についてであるが、粒径の測定法はどうなっているのか。また粒の形状、セシウム含有の有無はどうか。
徳森(東京電力):測定器と方法については23ページに説明がある。セシウムは含有している。粒形状は未確認である。
更田委員:資料23ページにある細粒測定器が0.3~10μが測定範囲で、0.3~0.5μが92%とすれば、より細径粒子の存在を想定すべきである。ダスト収集計画はあるか。
松本(東京電力):これは取り敢えずの測定経過報告であり、次回により体系的な報告をする。
熊谷(規制委員会):資料3ページの「飛散抑制対策」について、ガレキ撤去時の「飛散防止剤散布」とあるが、これは「作業後」の意味か?
小林(東京電力):作業前後に散布する。資料はチェックミスである。
丸山(日本原子力研究開発機構):資料20ページと22ページの線量分布結果に疑問がある。22ページ左端にある「53mSv」はなにか。
都築(東京電力):53mSvという数字はオペフロ上の数値を拾ったものだろう。
松本(東京電力):近寄れるところを計測したローカルな数値と理解して欲しい。
梶本(規制庁):1号機は長時間注水した結果、上部に核が拡散し凝縮されている可能性がある。
星(規制庁):全体に沈着している可能性はある、中心部が高い理由が不明だが。
(所見:原子炉周辺環境の調査は今後重要性が増すと思われるが、調査の原則的な手法の構築が必要。「やってから考えよう」と言う安直な姿勢が目立つ。)
議題3.原子炉格納容器内部調査について(資料3)
滝沢(東京電力)が、格納容器内部調査に関し、1~3号機で調査孔が異なる理由、また号機別調査計画について説明した。また3号機のROV(水中遊泳式遠隔装調査装置)による調査の詳細計画について説明があった。
この説明を受けて以下の質疑が行われた。
. 丸山(日本原子力研究開発機構):3号機のPVC調査の見通しはどうか。またROV調査の習熟訓練(資料16ページ)の内容はどのようなものか。また水の透明度はどうか。
滝沢(東京電力):水の透明度は良好である。画像も安定し、アクセスも良好だ。
松本(東京電力):実物大のモックアップを使用し、巨大水槽で習熟訓練中である。ケーブルの取り回しなど、現場で生じるトラブルの事前回避を訓練している。
高坂(外部専門家):ROVの長時間運転の線量耐性はどうか。予備機はあるのか。調査の優先順位はどうなっているのか。
松本(東京電力):19ページにROV仕様を掲載してある。200Gy(グレイ)までの線量に耐える。東芝が事故以前から開発していたもので予備機もある。
滝沢(東京電力):ペデスタル地下階の調査を優先する(資料14ページ参照)。堆積物の捕捉機能はないが、付着物分析は考えている。
更田委員:格納容器の内部調査について、ペデスタル以外の部分(例えばトーラス室、ベント管など)へのアプローチは何かあるのか。
松本(東京電力):2、3号機については早い時期(2012年頃)トーラス室まで人が入っている。1号機は事故当時、地下階から蒸気発生などにより高線量で近付き難い。
更田委員:1号機の6ペネの高線量はなんとかならないか。これを使えないのは惜しい。
松本(東京電力):機器ハッチからの侵入の可能性があるが、表面積が大きく線量に問題がある。1~3号機のデブリ処理については、難しいところから始めて易しいところへいくのか、それともその逆か、検討することが必要である。
更田委員:廃炉作業については次回以降別途に。
(所見:前回は「デブリ処理」検討は時期尚早との更田委員の発言があったが、3号機ROV調査については合意した模様。「処理」については規制委が主導するわけではなさそうだし、関係の調整が必要なのだろう。)
(総括所見:近隣環境や作業者に与えるリスクの分析と評価については筋道が見えてきて規制委も「中期的リスクの低減目標マップ」を作成している。一般的な原発シビアアクシデントに対して作業と評価の指標的なものをいずれ編纂すべきときが来るのかも知れない。)
以上