特定原子力施設監視・評価検討会 第53回会議(2017年5月22日)傍聴メモ

特定原子力施設監視・評価検討会の第53回会合が5月22日(水)に開催されました。

会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらをご参照ください。また、会議の映像も配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。

http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/

以下は、福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、T.M.氏が重要と判断した議論を編集したものです。

議題1.建屋滞留水処理の進捗状況について(資料1)

磯貝(東京電力)が、1から4号機の滞留水処理の進捗状況について説明した。

(1) 1号機では床ドレンサンプにポンプを追加設置し、水位低下を実施した。その結果、タービン建屋は床面が露出した。現在もその状態を維持できている。なお5月8日から一週間の間、水位の変化が緩やかになっている。これは復水ポンプ配管トレンチと床ドレンサンプが連通しているからではないかと推測している。また、露出した床面のダスト抑制を実施した。

(2) 2号機から4号機については、今年12月にタービン建屋の中間地下階床面を露出させる予定であり、そのための準備作業を行っている。また、高濃度の復水器内貯留水の処理を行っている。2号機の復水器ホットウェル(HW)天板までの水抜きを実施し、完了した。

この説明を受けて以下の質疑が行われた。

徳永(外部専門家):3ページの水位計測による「連通可能性」について、水質調査をする必要があるのではないか。

更田委員:水位の変化の仕方が変わるのは連通によるのではないか、という推測はあくまでも状況証拠に基づく解釈であって、どことどこが連通しているのかは分からないということだ。降雨の変化、連通だけで説明は出来ないのではないか。また設計・施工時の図面と現実の差をどこまで把握しているのかをいずれ報告して欲しい。

松本(東京電力): 資料4ページの平面図を見て欲しい。床ドレン・(直上の)機器ドレン・配管トレンチの間でなんらかの連通がある可能性が考えられる。

更田委員: 資料8ページのダスト線量測定の時定数(計測から結果までのタイムラグ)はどれほどなのか? またダスト濃度について、マスク着用基準の1/100  ~ 1/1000、敷地境界濃度との対比は?

松本、白木(東京電力):セシウム、ストロンチウムは通常数値内である。ガンマ核種なら待ちが無ければ即刻出せる。ダスト濃度(1.E-05)は敷地境界での告知濃度とほぼ同一水準である。

高坂(外部専門家):9ページ、11ページに、2020年までに建屋滞留水処理を完了するとあるが、これらはタービン建屋についてのことであり、原子炉建屋は含まれていないことを明記すべきである。

松本(東京電力):この点は11ページの図中に、原子炉建屋では循環注水を行っており、建屋滞留水処理の完了はそれ以外の建屋についてのことである旨注記してある。

徳永(外部専門家):水位の議論と水量の議論を混同せずに明確に区別して欲しい。

更田委員:線量低減とともに地下水への流出リスクは漸減してゆく。

議題2.地震・津波対策の進捗状況(資料2)

山内(東京電力)が、(1) 1、2号機の排気筒(高さ120m)解体計画と、(2) 除染装置スラッジの津波保護の状況について説明を行った。

除染装置での滞留水処理により発生したスラッジは、プロセル主建屋地下のピットに保管している(597㎥)。開口部がO.P. 10mにあり、引き波により外部に流出する可能性があるので、開口部の閉塞等の対策を検討中である。

この説明を受けて質疑が行われた。

蜂須賀(大熊町商工会会長):排気筒と建屋との連通状況はどうなっているのか。また計画・施工に時間がかかり過ぎているのではないか。

山内(東京電力):建屋とはダクト閉状態も密封ではない。工事を有人とするか無人とするかを検討したが、被曝の可能性があるのと、高所鳶職を集めるのが困難だということで無人施工で行うことに決定した(2017年3月)

更田委員:7ページにある工程は冗長だ。「今年から詳細設計」では遅い。調達が「立則」なのか、発注がかけられない理由は何か。

山内(東京電力):旋回作業部の軸受がオーダー品であり、作るのに時間がかかってしまうということがある。被曝環境下での同種工事の実績が無い。

更田委員:地震対策としては筒上部1/2を除去できればリスクは大幅に減るが。

松本(東京電力):工程が冗長に見えることは承知している。以降も精査したい。

更田委員:13ページの検討スケジュールが頼りない。「検討用津波(26.3m)」に対しスラッジ「安定化」か「抜出し」かの判断時期はいつになるのか?

松本(東京電力):「安定化」についてはセメンテーション(セメント材を入れて固める)の提案を現在受けており、検討している。「抜出し」については研究開発の段階にあり、詰めているところである。

更田委員:本件については、田中委員が放射性廃棄物の処理・処分という観点から検討会(放射性廃棄物規制検討会)でこの問題にあたっている。他方、本検討会ではリスク低減という観点からこのスラッジの問題を重視している。場合によっては二つの検討会が合同して会議を開くことも考えられる。スラッジに特化した検討を行いたい。そのために数ヶ月中に全体像を提示して欲しい。

高坂(外部専門家):20ページ「使用済み燃料プール注水」での「海水」使用は非現実的である。

議題3.排水路の水の濃度低減対策について(資料3)

白木(東京電力)が説明。主としてK排水路のセシウム濃度について水源に遡って調査した。建屋屋根の汚染瓦礫を起因として雨水にセシウムが混入していることが判明した。

この説明をめぐって以下の質疑があった。

更田委員:汚染源の調査と対策は東電の地道な努力に待つ。降雨時に濃度と流量がそれぞれ1桁あがれば汚染は2桁あがる。それが分かるよう、汚染総量の記述をするようにしてほしい。

徳永(外部専門家): 9ページにあるように降雨と排水濃度には時間差もある。

高坂(外部専門家):大変な作業だが、スケジュールが分かるようにしてほしい。屋根上の高濃度瓦礫に起因する汚染水は別途処理は考えられないか。

議題4.原子炉格納容器内部調査の計画について(資料4)

滝沢(東京電力)が今後の計画(10ページ以降)について説明した。2号機はガイドパイプの補強再調査を計画している。3号機は水位が高いので、水中遊泳式ロボットでの水中調査を計画している。

この説明をめぐって以下の質疑が行われた。

更田委員:中長期の計画は別途検討することとして、至近の計画について言えば、2号機はクローラ(這って自走する)方式では無理なのか。

松本(東京電力):ロッドの材質・強度を強めてガイドパイプでもう一度再挑戦したい。

更田委員:機密や安全に留意して、大きなペネを開ける計画を提示して欲しい。2号機の調査はいろいろな情報を与えてくれたが、3号機の調査目的は何か? 2号機のような明確な目標があるのか。

松本(東京電力):まず中の状態を見たいということがある。水中の有線ロボットで、視野も広く自由度もある。今年夏にトライアルを予定している。

 

高坂(外部専門家):今夏に号機ごとの燃料取出し計画を纏めるという別情報がある。本件との関連を東電かエネ庁に説明して欲しい。

松本(東京電力):1~3号機のデブリ取り出し方針を並列で検討する。

湯本(エネルギー庁):3号機については取り出し方針の一助にすべく今夏に調査を実施しようということである。モックアップ準備に欠かせない。3号機は水位が高く、2号機の検討の転用では無理との判断もある。

更田委員:今年の夏に決定されるという「方針」についてはその人によってその理解が大きく異なっていると考えている。少なくてもこれまでの検討に基づいて方針を立てるというのであれば、そんなに確定的な方針が立てられるはずがない。今年の夏に決められるのは基本的で大枠のものにならざるをえないと考えている。将来、工学的に変更の効かないような「方針」をこの夏に定めるというようには理解していない。「検討会」としては無理だと認識している。

湯本(エネルギー庁):委員のコメントの通りだと思う。調査も必要に応じてやっていくし、状況が分かれば必要に応じて手直しをしていく、そうした意味での方針とわれわれは理解している。

その他の議題

1.注水量低減について

資料5について山内(東京電力)から説明があった。1~3号機の注水量を4.5から3.0㎥/hに低減した。号機ごとに反応に差異があるものの安定的に推移している。今後は炉心スプレイ系か給水系かの片方に絞って1.5㎥/hを狙う計画になる。

この説明をめぐって以下の質疑が行われた。

高坂(外部専門家:号機別にデブリの露出形状に差があると考えられ慎重を要する。

更田委員:温度データから見て、号機毎に感受性があり、慎重に判断しつつ注水量低減に取組むべきである。

2.凍土壁について

高坂(外部専門家)から、未凍結箇所が1ヶ所あると聞いている、凍土壁の評価と進捗について検討会として審議すべきであるとの発言があった。

これに対して更田委員は次回に審議すると回答した。

(所見)

新聞辞令では更田委員の規制委員長昇格が取りざたされ、今回は引き継ぎがらみかと思われたが、更田委員にその気配は全く感じられなかった。

デブリの調査と処理方針について、エネ庁・東電と規制委との間に認識と姿勢の差が見えてきた。規制委はリスク秤量を気体>液体>固体を基準に検討してきた。その評価軸では固体デブリには安定性があるとも云える。しかし1F全体の処置を考えるうえではデブリ取出しの検討は避けられない。規制委の基本姿勢が問われることになりそう。

                         以上

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