特定原子力施設監視・評価検討会52回会合(2017年3月22日(水)傍聴メモ

特定原子力施設監視・評価検討会52回会合(2017年3月22日(水)傍聴メモ

特定原子力施設監視・評価検討会の第52回会合が2月20日(水)に開催されました。

会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらをご参照ください。また、会議の映像も配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。

http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/

以下は、福島原発行動隊(SVCFの原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、T.M.氏が重要と判断した議論を編集したものです。

議題1.1Fの現状と周辺環境に与える影響(資料1、別添1)

白木(東京電力)が1F周辺の陸・空・海への影響について総括的に説明した。これを受けて質疑が行われた。

(1) 陸について。

更田委員:境界線量1mSv/yはクリアしているか。

松本、白木(東京電力)敷地の南側はフェーシングしているが、タンクが存在しているため 0.6mSv/yと高い。北側は土のままで、境界内外での放射線量の差は少ない、むしろ域外が高い傾向も見られる。

高坂(福島県専門家):県も逆転現象は把握している。今後の方策を検討中である。

更田委員:域外を含めた放射線量の低減対策を今後の検討議題にしたい。

山本(外部専門家):評価値(1mSv/y)とは別に実測値はどうか、またスカイシャインンの影響はどうか。

松本、滝沢(東京電力):敷地内は除染とタンク水処理で5μSv/hまで下がっている。スカイシャインも3号機の瓦礫処理で下がってきている。別添(p. 10)にモニタリングポストの6年間の線量低減(ほぼ1/100)が図示されている。

更田委員:確かに評価値とは別に根拠となる絶対値を示す必要はある。

(2) 空について

高坂(福島県専門家)原子炉冷却に関連して、(1) 2号機建屋のダスト管理の信頼性、(2) 冷却水回路の安定性、(3) 津波対策で「機動的対応」の現場実態との乖離に疑問がある。

松本、滝沢(東京電力):注水量削減は本日完了する。(3) については状況を別途報告する。

更田委員:建屋関連ダスト対策は経験を生かせる段階にある。むしろ撤去予定の排気塔の(事故的)倒壊時の対応などに不安が残る。注水減少の結果が安定したら注水停止の計画を立てるべきではないか。

松本(東京電力):炉内状況が可視的でなく、空冷には不安があるが、滞留水の気化熱でバランスが取れるレベルではないかと推定している。注水削減での温度履歴は1~3号機で微妙な差異がある点も注視しておきたい。

更田委員:今の温度なら止水しても数箇月は何も起きないことを確言すべきである。

高坂(福島県専門会):原子炉制御の観点から、電源・監視系の津波対策はどうなっているか。

伊藤(東京電力):電源・制御系は高台に移転しているが、津波到達時には建屋周辺のケーブルについては「機動的対応」が必要になる。

(3) 海について

(更田委員:津波による滞留水の流出が懸念されたが、線量低減でリスク減少した。処理済水100万トン(そのうち4分の3はALPSで処理済みである)の処分はエネ庁が検討していると承知しているが、処理について東電が意思決定する必要がある。

高坂(福島県専門家):K排水路の汚染水対策が未解決となっている。凍土壁について、専門家は壁厚が5mになれば近隣設備の基礎構造物に圧密の悪影響が出ると言っているが。

松本(東京電力):K排水路について指摘を受けた点について方策を近々報告する予定である。凍土壁の運用は6~7年を考えているが、状況により判断したい。

(4) 全体について

山本(外部専門家):全体的に安定してきたが、廃炉までに仮設から本設にむけて、リプレイス・メンテナンス体制の計画はどうなっているか。被曝線量との関連評価はどこまで進んでいるか。

松本(東京電力):主要装置類はメンテ計画を作り「状態監視保全」、また一般機器は劣化監視で個別対応している。「体系的」のレベルは今後の課題である。線量データは収集しているが、高線量の場所も残っている。

更田委員:(1) マスク着用エリアの現状と計画はどうなっているか。(2) 炉心注水減少に必要な3㎥/h以下が測定できる流量計の準備はどうか。(3) 海側遮水壁の耐用年数と評価はどうなっているか。

松本(東京電力)(1) 別添(p. 16)でエリア拡大の報告をしている。(2) については調査中である。(3) 鋼管間継手が海陸水位差による反復加圧で劣化(耐用50年)することが問題で、監視保全を実施している。

高坂(福島県専門家):海側鋼管壁と凍土壁の間に設置した「水ガラス」遮水壁の現状はどうなっているのか。

滝沢(東京電力):耐用年数は10年を想定している。前後の線量変化から有効に機能している。

更田委員:ブルータンクの使用状況はどうか。

松本(東京電力):400基中300基は使用を完了して敷地内に置いてある、持出しの検討はしていない。100基は滞留水処理に使用している。

 

議題2.建屋滞留水の水位管理の変更について(資料2)

園田(東京電力)が、建屋内に孤立した少量の滞留水のある部屋があり、漏洩がないことを確認して「水位管理対象」から除外したい旨を説明した。

この説明をめぐって以下の質疑が行われた。

更田委員:ポンプで可能な限り抜き出すとして、その以後の処理はどうするのか。

園田(東京電力):サリーでストロンチウムの除去処理する。

 

議題3.フランジ型タンク解体時の放射線防護について(資料4)

今井(規制庁)から「眼の水晶体」への国際的被曝基準が変更されることを踏まえて、防護服とポリカーボネイト・アイピースの遮蔽効果を説明した。

 

議題4.1号原子炉格納容器内部調査について(資料3)

滝沢(東京電力)から、自走式ロボットを格納容器グレーチングに送り、隙間から計測ユニット(カメラ+線量計)を垂下させて内部調査を行ったことについて説明があった。

この説明をめぐって以下の質疑があった。

更田委員:資料5ページに、参考的に計測したBG点の最下点で11Sv/hと線量が高くなるとあるが、この下になにか(たとえばデブリ)あるということか。

橘高(外部専門家):ペデスタルの周辺壁面のカメラ映像にデブリの影響はみられたか。

滝沢(東京電力):データはとれていないが、特にダメージは見られなかった。

更田委員:2号機でやったように、棒にカメラをつけたローテク調査は出来ないか。

松本(東京電力):2号機X6ペネでは棒を差し込む直線管路があったが、今回のX100Bペネでは障害物があった。

廃炉までの計画について

更田委員:廃炉までのステップと優先順位を次回検討したい。

高坂(福島県専門家):前回更田委員の示した方針(本件の視点は、(1) 環境保全(隔離安全対策)、(2) 現状保全(現場の変更の制限、(3) 事故状態分析(ペデスタルとグレーチング状態観察など)を検討の前提にして欲しい。

 (所見)

事故から6年を迎えて今回は総括的な現状確認が多かった。別添資料1は東電のみた事故後の経緯と今後の計画をまとめたもので、目を通す価値がある。ただ「東電の視点」であることには留意すべきで、例えば11ページの「固体廃棄物管理の状況」では瓦礫から水処理二次廃棄物まで網羅してあるが、物量は重量表示で含有放射線量の記述はない。別添資料2の2/2ではこの吸着塔の保管量は3,520基とあり、津波対策上も放射線防護上でも長期対策が必要と思われる。廃炉に向けた作業計画とともに、処理したものの安定化もリスク管理として重要であると考える。

以上

カテゴリー: 00 基本情報, 01 原子炉の状態, 02 滞留水・汚染水の状況, 03 放射線量低減・汚染拡大防止, 06 固体廃棄物の保管・処理・処分, 21 トピック パーマリンク