特定原子力施設監視・評価検討会 第51回会合(2017年2月20日開催)傍聴メモ

特定原子力施設監視・評価検討会の第51回会合が2月20日(金)に開催されました。

会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらをご参照ください。また、会議の映像も配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。

http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/

以下は、福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、T.M.氏が重要と判断した議論を編集したものです。

議題1.建屋滞留水処理の今後の進め方について(資料1

滝沢(東京電力)が建屋滞留水処理の進捗状況について説明した。それによれば、現在、1号機タービン建屋で、年度内に最低階の床面を露出させることをめざして滞留水処理作業を進めている。

また、2020年までに全ての建屋滞留水処理を完了させる計画であるとし、今後の作業内容について説明した。

なお、今回3号機の原子炉建屋にあるHPCI(高圧注水系)室で新たにサンプリングをしたところ、少し濃度の高い水が確認できたと報告した。これにより建屋滞留水放射性物質量の図(p. 7)も上方修正した(図中点線が旧い数値で、実線が修正後の値である)。

この説明をめぐって以下のような質疑があった。

更田(原子力規制委委員会委員):インベントリ減少の計画に大きな異同はなさそうだ。ただ、HPCI室で高い濃度の滞留水が発見されたとのことだが、どれほどの濃度だったのか。

松本・滝沢(東京電力):Cs137(セシウム137)が4.3E+08レベルで、これまでの原子炉建屋の濃度の約5倍の濃度だった(p. 11)。どう処理するかについては、サリーへの負荷を考慮しながら、単独または混合処理を検討している。

高坂(外部専門家):今後も高線量滞留水の発見はありうるか。

松本・滝沢(東京電力):全エリアのサンプリングはまだ終わっていない。今後サンプリングを進めて行く中で、特に原子炉建屋では高線量滞留水の発見がありうる。

徳永(外部専門家):1号機への地下水流入量が最大で5㎥/hであると想定する根拠は何か。

松本・滝沢(東京電力):これまでの経験降雨量と地下水流入量から推測している。この値はポンプ排水容量(約18㎥/h)の1/3以下である。

高坂(外部専門家):地下水位を建屋水位+800あたりで実施を計画(別添資料1~2)しているようだが、確実を期すなら建屋間止水壁も必要でないか。

滝沢(東京電力):止水も必要に応じて検討するが、まずは地下水の水位をサブドレンの活用でしっかり制御したいと考えている。

更田委員:止水壁の工事ができるかどうかは線量環境による。まずは露出させてみて、どうなっているのかを見てからのこととなる。

松本(東京電力):5、6号機のように自由にアクセスできても、止水することはなかなか難しい。自由にアックセスできない他の号機では止水の方策はない。サブドレインとあわせてやっていくのが現実的だ。

更田:それだとトーラス室の水位は上げられない。その後のステップはこの水位でやっていかなっくてはならない。なお、水位表(別添1~2)に地下水位を記入してもらうと分かりやすい。

橘高(外部専門家):露出床面コンクリートは汚染含水の可能性があるので注意が必要である。

小林(東京電力):おっしゃるとおりです。床面には防水エポキシ樹脂塗装をしている。

山本(外部専門家):現在は広い領域が連通している状態だ。しかし今後水抜きを続けて行って止水が進むと、水位の異なる部屋(コンパートメント)が増える。その場合には水位が上下しやすくなる。何か外乱があった時にすぐ反応が起きるので、そうした反応に留意して欲しい。

更田委員:残水発見時の処理法(p. 18)は一定ではない。その都度方針を検討していくことになる。

蜂須賀(大熊町商工会会長):汚染水に関しメガフロートの漏水が報道されているが、どうなっているのか。

松本(東京電力):メガフロートは内部が区切られている。そのうちの1区画で水位上昇が確認された。ただ事故後、当初はメガフロートに低濃度汚染水を貯留したが、以降入れ替えて無汚染水を入れている。完全無線量とは云えないが。

議題2.3号機使用済み燃料プールからの燃料取出し(資料2)

徳森(東京電力)が進捗状況を説明した。オペフロの整理は完了した。取出しクレーンのストッパ設置段階にある。設置物は加工後小名浜で組立てた後、作業の確認と習熟を実施する予定である。

この説明をめぐって以下の質疑が行われた。

更田委員:概ね計画通りに進んでいると判断した。作業場所線量(p. 41)の7m測定箇所の高線量は作業構台に立壁遮蔽を付ければ済むことではなかったのか。

徳森(東京電力):作業当時の環境で作業の簡易化と軽量化のためこの形になっている。

高坂(外部専門家):ボルト締め本数が5万から1.6万本に減少しているが、作業員の被ばくを下げるために今後も何らかの工法的な工夫をするのか。

徳森(東京電力):半自動冶具の考案で、3min/本から2min/本へと短縮が可能になった。

更田委員:取出し燃料の保管(キャスク増設も含め)は長期計画が必要である。本件はガーダー取付け時点で再度報告して欲しい。

議題3.2号機原子炉格納容器内部調査(資料3)

内田(東京電力)が、X-6ペネを用い格納容器内の観測と計測調査(1/26~2/16)について説明した。

報告をめぐって以下の質疑があった。

更田委員:本件の視点は、①環境保全(隔離安全対策)、②現状保全(現場の変更の制限、③事故状態分析(ペデスタルとグレーチング状態観察etc.)である。

山本(外部専門家):線量・温度調査結果(210Sv/h、16.5℃)は一点表示だが連続データはあるのか。また530Sv/hの線量報道があったが。

松本(東京電力):積算線量計の結果で今は一点のみであるが、今後解析継続の予定である。線量が530Sv/hだったというのは不用意な発言だった。

更田委員:線量数値は有効1桁で発表すべきであった。むしろ線量の方位変化が重要である。

橘高(外部専門家):写真を見ると、グレーチングが崩落しているのは容器周辺部であり、中央を通るH型鋼は変形していないように見えるが。

更田委員:推測だが、メルトダウンしたデブリはグレーチング中央に集積し、溶融した金属類が周辺部を溶かしたのかも知れない。今後注目すべき情報だ。今後の観測口の計画はどうなっているのか。

松本(東京電力):今回のX-6ペネは60mm径のうち10mm孔を開けている。この穴を拡大していって観測することが一番現実的である。ただその場合には線量の問題がでてくる。

更田委員:次回の会合は3月22日を予定している。発生後6年を経て検討の総括を行い、次のステップと規制の方針を提示して検討したい。

(所見)汚染水のリスク管理が収束の方向になり、格納容器内観察調査については作業安全の立場でこの検討会の役割は継続すると思われるが、デブリ処理などはエネ庁などとの(更には世界の原発の安全性と過酷事故対応との)線引きが定まっていないように思われる。

以上

カテゴリー: 01 原子炉の状態, 02 滞留水・汚染水の状況, 21 トピック パーマリンク