特定原子力施設監視・評価検討会の第50回会合が1月27日(金)に開催されました。
会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらをご参照ください。また、会議の映像も配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/
以下は、福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、T.M.氏が重要と判断した議論を編集したものです。
議題1.建屋滞留水処理の進捗状況(資料1)
滝沢(東京電力)がこれについて説明を行った。その要旨は以下の通りである。
・2、3号機復水器内貯留水の放射線濃度実測の結果、当初想定値の1/4と判明した。
・建屋滞留水について、沈殿スラッジを攪拌混合して回収するためのスラッジ性状分析を実施した。
・1号機では年度内に最低階床面露出を計画している。
この報告をめぐって以下の質疑が行われた。
更田(原子力規制委員会委員):建屋滞留水量を「保守的に評価」とあるが誤解を与える。条件を明記して確認の進行に従って修正すべきである。スラッジ攪拌で濃度は上がるが。
松本、滝沢(東京電力):現在は攪拌していない。対象量は300㎥で攪拌機は11㎥/min×4基、環境線量は0.5mmSv/h、攪拌機自体は10mSv/h(遮蔽して5mmSv/h)。被曝環境的には経験のある水準である。
高坂(外部専門家):建屋滞留水放射性物質量(p. 9)の評価が前回に比べ下がったのは幸いだが、復水器も慎重に作業を進めて欲しい。
松本(東京電力):復水器内は少量ではあるが、inventoryとしては50%を占めている。慎重な手順で臨む。
更田委員(規制委):建屋滞留水の攪拌・抜取りはリスクはあっても止むを得ない作業である。抜取り後の貯留(たとえば HICを使用するなど)についても慎重に検討して欲しい。
議題2.地下水流入対策の現状(資料2)
百瀬(東京電力)が、降雨・流入量・サブドレンくみ上げ量・4m盤くみ上げ量の推移を説明した。4m盤くみ上げ量は140㎥/日で、山側止水の効果は160㎥/日出ている。予測では山側完全止水でもサブドレンの稼動継続は可能である。
この報告をめぐって以下の質疑が行われた。
更田(規制委):規制委員会は、東電が申し出た凍土壁海側流出70㎥/日を山側締め切りの条件としてきたが、140㎥/日で落着いてきたということか。pp. 19~20の注水試験で、注水してからサブドレンの水位上昇までの応答速度が大きく、水位制御に即効性があるということか。
橘高(外部専門家):p. 9の「重回帰式」は降雨量実績に左右され予測には使えない。
更田(規制委):数値評価より山側・海側のどちらが工学的に止め易いかが問題である。
百瀬(東京電力):山側にも貫通孔があり、難度としては同等と考える。
徳永(外部専門家):「閉合実施後想定」(p. 33)で周辺サブドレンの影響はどうか。
百瀬(東京電力):p. 33の下部線図の下方突起点近傍にサブドレンがある。
蜂須賀(大熊町商工会会長):「注水による水位上昇効果」(p. 19)にある水位上昇16cmは住民にとって安全といえるか。
百瀬(東京電力):今は注水効果の確認段階であり、安全への評価は今後行う。
湯本(資源エネルギー庁):海側流出量 70㎥/日 の数値に固執しすぎているのではないか。
更田(規制委):70㎥/日という数値は東電が提示した指標である。規制委としては、その倍量でも今回の結論を了承している。次の段階では5ヶ所中4ヶ所を締め、1ヶ所を開けて事態を判断したい。
議題3.護岸付近の地下水のモニタリング状況(資料3)
白木(東京電力)が護岸付近のトリチウム・全β・Csにつき2014年と2017年を比較して説明した。
この報告をめぐって以下の質疑が行われた。
更田(規制委):全βが地中に沈降しているようにも見え、人には害がないとも言えるが。Csの湾内濃度を見ると排水からの流出も考えられ対策が必要である。
高坂(外部専門家):3年前と大差は無いが、流出地下水の浄化機能増強が必要なのではないか。
白木(東京電力):地下水ドレンについてはモニタリングを継続する。
蜂須賀(大熊町商工会会長):全βについては時折の報告で住民は事態経過が分らない。
更田(規制委):リスク問題とは別に地元に定期的な事態説明が必要だろう。
議題4.2号機海水配管トレンチ立坑Cの状況と今後の対応について(資料4)
都築(東京電力)が、立坑C水位に建屋からの流入はなく、水抜き閉塞を実施したと報告した。
この報告をめぐって以下の質疑が行われた。
高坂(外部専門家):建屋をドライアップした場合、立坑Dの凍結解除の影響はあるのか。
都築(東京電力):ドライアップした場合は立抗と縁が切れるので凍結解除に問題はない。
議題5.フランジ型タンク内のCs処理水に関するリスク低減対策(資料5)
山口(東京電力)が、G6南フランジタンクのCs処理水貯留をALPS 1、3を使って循環浄化すべく検討中であると報告した。また循環復路設置に問題があるとした。
この報告をめぐって以下の質疑が行われた。
高坂(外部専門家):p. 4に「ALPSの浄化状況確認」とあるのはどういうことか。
山口(東京電力):高濃度処理をしていたALPSに低濃度の汚染水を入れると触媒から放射性物質が離脱する恐れがあり慎重に実施する必要がある。
更田(規制委):「タンクから抜くことに問題」があるとのことで循環を提案したが、今回は循環も難しいという表現になっている。東電の真意は。
松本(東京電力):東電としては復路設置の要らない「水抜き」が望ましいと考えている。
その他1:2号機 原子炉格納容器内部調査における格納容器貫通部(X-6ぺネトレーション)内の事前調査の実施結果について(資料6)
滝沢(東京電力)が、格納容器(PCV)内部調査(計画では7ステップ)のステップ4の状況を報告した。
この報告をめぐって以下の質疑が行われた。
更田(規制委):ステップ7までのスケジュールはどうなっているのか。
松本(東京電力):ステップ5は次週に実施する。2月中にステップ7まで実施する予定である。
高坂(外部専門家):規制委はサンプリング器具に付着している堆積物に関心がある。分析依頼や輸送については支援するので申し出て欲しい。
高坂(外部専門家):作業安全についての対処はどうなっているのか。
松本(東京電力):挿入物には2重のOリングを装着し、外部の雰囲気が容器内の圧力より高くなるようガス圧をかけて作業している。(Oリングがきつ過ぎたことは新聞に載った。)
その他2:炉心注水削減の状況(資料なし)
松本(東京電力)が、1号機の注水量を4.5㎥/hから3.0㎥/hに削減したが有意な影響は現れていないこと、年度内に2、3号機についても実施予定であることを報告した。
この報告をめぐって以下の質疑が行われた。
更田(規制委):冬場で水温が低く影響は見極めがたい。
更田(規制委):1~3号機が3.0㎥/hに揃った時点で、報告を受け評価したい。
その他3:高浜のクレーン倒壊事故に対して、1Fの対応状況
松本(東京電力)が説明した。750トン・クラス3台を含め11台が現地にある。メーカの強風対応策を遵守し、ブームの水平化やカウンターウエイトの風上設置などを行っている。1Fでの野外作業は風速10m/secで中止している。
(所見)建屋滞留水(復水器内滞留水を含む)の処理は、慎重な施工が必要にしても、量的・inventory的に峠を越した感がある。他方、リスクは限定的だがトリチウム含有水は処理方針の素案すら示されていない。フランジタンクの問題も大量のトリチウム含有水タンクの存在から派生しているとも言える。地下水流入対策は、規制委の傍観的態度のなかで、東電(エネ庁・鹿島を含む)の多様なアプローチと水バランス予測の提示が効を奏して、全面閉塞まで近付いてきた。が、地中障害物の凍結困難や補助工法の採用など1Fを越えて沿岸立地原発の過酷事故対処工法として標準化したとはとても云えない。今回提示された格納容器内調査については、この検討会の担当する分野がどのあたりにあるのか明らかではないが、廃炉に向けたアプローチの新展開として注目しておきたい。
以上