特定原子力施設監視・評価検討会の第49回会合が11月19日に開催されました。
会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらを参照してください。また、会議の映像もすでに配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/
以下は、福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、T.M.氏が重要と判断した議論を編集したものです。
議題1.建屋滞留水処理の進捗状況について(資料1)
園田(東京電力)が、1号機タービン建屋の線量低減と干渉物撤去の作業が完了したことを報告した。また1号機復水器内滞留水の早期処理に向けた作業状況を報告した。この報告に基づいて以下の質疑が行われた。
更田(規制委委員):全体の作業状況は了解した。12ページの「復水器内希釈イメージ」は東電の願望的解釈であり確認は出来ない。5ページの「ヒータドレン配管の線量低減」について、保温材の汚染除去に関しては問題が残る。
山本(外部専門家):以下の3点を質問したい。①建屋床スラッジの除去と保管の方法、②スラッジの放射性物質と線量、③建屋水位を下げることでの地下水流入見通し。
松本、園田(東京電力):①スラッジは性状に応じて保管容器・場所を選定している。②スラッジ性状は測定中である。③サブドレン水位との調整で対処することとしている。
更田委員(規制委委員):スラッジの量と存在状態はどうなっているのか。攪拌は水位との関係で合理的か。
松本、園田(東京電力):滞留水水位は80cm、スラッジ沈殿2cmである。現状で攪拌し、スラッジをろ過除去して抜き取る(p. 7参照)か、ドライアップして取出すか検討中である。
高坂(外部専門家):①配管フラッシング(p. 5)は可能か。②移送ルート見直し(p. 6)でベント抜きは出来るか。③床置ドレンポンプで水位制御は可能か。④工程表(p. 10)で、2020年から2018年へ前倒し出来る可能性はあるのか。
松本、園田(東京電力):①配管フラッシングは実施予定である。②押込みポンプを使用し、ベントに問題はない。③水位計を投入する。④タンクは2018年までに準備する。1号機の実績次第である。
更田(規制委委員):「1号機タービン建屋におけるダスト濃度の推移」だが(p. 8)、9/25~11/30の上昇は「雰囲気線量率上昇による影響」であるという説明は誤解を与える表現になっている。汚染問題にはシビアな反応があることを銘記して欲しい。
安井(規制庁):「復水器内汚染低減」(pp. 11-12)でホットウェルの濃度が大きく下がっているが、本当かなと疑問に思っている。2回目に抜いたときの濃度は分かっているのか。
園田(東京電力)濃度測定は未実施で、線量測定のみである。今後濃度測定も計画している。
安井(規制庁):2、3号機の測定の可能性はどうか?
園田(東京電力)2号機はオペフロからの測定を検討している。
議題2.フランジ型タンクの使用状況と今後の対応方針について(資料2)
磯貝(東京電力)がフランジ型タンクの使用状況について説明した。12月8日現在、使用中のフランジタンクは176基(12.3万㎥)、使用停止は160基ある。また、サブドレン強化と陸側遮水壁運用による水バランスを説明した。これに基づいて質疑が行われた。
更田(規制委委員):タンク内滞留水のインベントリは処理速度に立則しているのではないか。
松本、磯貝(東京電力):水量・濃度を下げることが肝要である。サリーの処理能力に立則している。
高坂(外部専門家):フランジ部エポキシ塗装は1段目だけで大丈夫か。
磯貝(東京電力):1、2段目間に雨樋があり、撤去しないと2段目足場が組めない。
議題3.陸側遮水壁の状況(資料3)
更田委員:時間制約のため資料説明は省略する。申請により陸側7工区中2工区の凍結を認可した(いずれも補助工法込みである)。海側東への流出70㎥/Dを陸側閉塞施行の条件としてきたが、現在130㎥/Dの状況である。海側が効果を発現する前に山側だけ効果をあげて完璧に止まることを一番懸念している。
百瀬(東京電力):14ページにあるように山側遮水でも建屋水位よりサブドレン水位は1m高い。サブドレン汲上げ量は数10㎥/日は確保できる。
更田(規制委委員):東京電力は注水井の作動確認をしたいということだが、上記状況から今がその時期か疑問である。東電が実施について判断する事項と思うがどうか。
規制委員会はサブドレンが地下水制御の要と思っており、凍土壁については海側の現状を見ても完全閉合は困難であると判断している。サブドレン汲み上げ量と建屋水位の関係について基準を定める必要があるだろう。
議題4.2号機海水配管トレンチ立抗Cの状況と今後の対応について(資料4)
東京電力側から、建屋と立抗との導通はないと確認できたので立抗を埋め戻したいとの申し出があった。この点に関して、凍結との関連と手順について質疑があった。
その他
高坂(外部専門家):資料5「原子炉注水」の効果について、気温による注水温度低下で効果の確認が不明確(p. 2)というのは如何なものか。
徳永(外部専門家):水収支について基本的な考え方と各々の問題の位置づけを明確にして欲しい。
(所見)
既存課題の逐次対応的な報告が多く、全体像と着地点が見えない。規制委のリスク削減の視点にブレはないが、「凍土壁」の如く当初の目標仕様から外れて、過酷事故対策のスタンダードとは言えなくなってきているものもある。
最大のinventry問題はALPS処理済み水(トリチウムを含む)で、国・東電・地元は3すくみ状態で、規制委は所管外に姿勢を示している。私見だが日本原子力学会を中心に学・産合同であるべき姿と現況からの突破指針を理論的に研究すべきではなかろうか。沿岸立地原発の過酷事故においては必須の対応案件でもあり、国際基準化の基礎にもなると考えるが。