特定原子力施設・評価検討会の第47回会合を傍聴しました

去る10月19日(水)、特定原子力施設・評価検討会の第47回会合が開催され、傍聴しました。

この監視・評価検討会は、原子力事故を起こした施設(特定原子力施設)を対象に、安全を確保する適切な措置を取るよう指導・監督する目的で原子力規制委員会の中に設けられました。なお現在のところ「特定原子力施設」に指定されているのは福島第一原発のみです。
福島第一原発の廃炉事業の中心は言うまでもなく燃料デブリと使用済み燃料の取り出しです。しかし対象となっている1号機、2号機、3号機はいずれも高線量のため作業は思うように進んでいません。しかも東京電力は、この間、本来の廃炉作業とは直接関係のない問題への対応に追われてきました。地下水と汚染水の問題です。
ここ何回かの会議ではっきりしたのが、この地下水・汚染水問題をめぐる原子力規制庁と東京電力の間の立場の違いです。
前回の私のレポート(10月5日)でも報告したように、東京電力は地下水対策を次の3つに整理しています。
1.汚染源を取り除く
2.汚染水に水を近づけない
3.汚染水を漏らさない
2014年の春以降、東京電力が資源エネルギー庁の後押しを受けてもっとも力を入れてきたのが、凍土遮水壁の建設によって2と3を実現することでした。
これに対して規制委員会は、とりわけ今年の6月頃から、上記1の「汚染水を取り除く」方策を強調するようになってきていました。また、「汚染水に水を近づけない」ための方策としてはサブドレンの活用(原子炉建屋の山側に掘った井戸(サブドレン)から地下水を汲み上げる)を重視しています。
こうした背景を押さえておくと、この日の会議で以下のような議題が立てられたのかも理解できると思います。
この日の議題は以下の通りでした。
1.建屋滞留水における放射性物質量低減
2.1〜3号機原子炉注水量の低減
3.陸側遮水壁の一部閉合
4.その他(「増設処理装置の増設工程検討」、「サブドレン他強化対策」)
この日の議論でいちばん時間がかけられたのは、議題1「建屋滞留水における放射性物質量低減」です。
この議題は前回からの続きです。
前回のレポート(2016年10月5日)で述べたように、規制委員会は、現在の福島第一原発で最大のリスクとなっているのは原子炉建屋とタービン建屋に滞留している高濃度の汚染水であり、この滞留水を除去してタンクに溜めることが望ましいとしてきました。前回の会議では、建屋内滞留水に含まれる放射性物質の80%は建屋復水器の内部に残留している汚染水に含まれていることが示され、この復水器内の貯留水の除去計画を東京電力が提示しました。今回、東京電力は、復水器貯留水の抜き取り・移送・浄化の方法についてより具体的な計画を提示しました。
「議題4.その他」は議題1と関連しています。原子炉建屋・タービン建屋に滞留している高濃度の汚染水を抜き取って浄化するためには現在の処理装置では足りず、新たに増設しなければなりません。東京電力は設置工程を15ヵ月にしたいと提案しましたが、規制委側は期間を短縮するように求めました。また規制委が重視しているサブドレン関連の強化対策についても、東京電力が提示したスケジュールが消極的であるとして、「これ以上早くはできませんというぎりぎりの計画を出して欲しい」と注文がつきました。
他方、議題の「3.陸側遮水壁の一部閉合」は東京電力の意向によるものだと言えます。これは現在7箇所ある未凍結箇所のうち2個所を閉合したいというもので、若干のやりとりがあった後、「2個所ほどを閉じても水位が大きく変わることはなかろう」と承認されました。ただし更田規制委員会委員から、規制としてはサブドレンの活用をメインだと考えており、サブドレンだけでやっていけるような方策を採って欲しいと注文がつきました。さらに更田委員からは、規制委員会は「陸側遮水壁についてはほとんど関心がない」といった発言まで飛び出しました。
「議題2.1〜3号機原子炉注水量の低減」については、「妥当である」としてあっさり認められました。これは燃料デブリを冷却するための注水量を各号機で4.5㎥/hから3㎥に減らすことで汚染水の増大を抑制しようとするものです。燃料デブリの温度はかなり下がっており、注水量を減らしても温度が大きく上がることはないであろうとの判断に基づいています。
なお、この日の会合については、技術者のT. M. 氏からもレポートが出される予定です。
カテゴリー: 02 滞留水・汚染水の状況, 21 トピック パーマリンク