特定原子力施設監視・評価検討会 第46回会合(2016年9月28日)傍聴メモ
特定原子力施設監視・評価検討会の第46回会合が9月28日に開催されました。
会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらを参照してください。また、会議の映像もすでに配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/
以下は、福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、T.M.氏が重要と判断した議論を編集したものです。
議題1.建屋滞留水処理に向けた取り組み(資料1)
園田(東京電力):サブドレンを強化し2020年までに建屋滞留水の処理を完了する。浄化を並行して進め、リスクを低減する。陸側遮水(凍土)壁の閉合を進め、タンク容量確保を2018年に前倒しして確保する。
この説明を受けて、質疑が行われた。
更田(規制委委員):資料1「建屋滞留水処理に向けた取り組み」のp. 44に示されているように、滞留水の含有線量(現時点で90×1.0E14Bq)の80%は2,000トンの建屋復水器残留水に含有され、建屋内滞留水(60,000トン)には残りの20%が含有されていることが判明した。この新しい資料に対する処理方針を検討することが今回の主要議題である。まず東電に復水器滞留水の処理方針を聞きたい。
松本・伊藤(東京電力):現在1号機の内部調査中である。1号機内部は4~50mmSv/h、外部は1~2mmSv/hである。2号機、3号機は高線量で調査不能である。1号機は水位が2メートル前後で、天板が水位中間にある。天板にポンプを設置することは可能である。希釈しながら抜き取りを行って、建屋に戻す方針である。
更田(規制委委員):建屋戻しは妥当か。G1エリア32m盤の地下タンクへの移送は検討しているのか。
高坂(外部専門家):地下タンクの安全性には疑問がある。また仮設配管設置にも問題がある。
更田(規制委委員):復水器の位置は堅固であってもBクラスであり、検討用地震に耐性はない。2、3号機についての見通しはどうか?(日立の原発用復水器の構造図を投影して)配管の詰まった複雑な機械だが、ポンプの設置は可能か。
松本・伊藤(東京電力)1号機は確認済みである。2、3号機は遠隔処理技術を開発中である。
更田(規制委委員):復水器に関する現状と技術的手法を次回説明願いたい。
高坂(外部専門家):復水器もさることながら建屋滞留水処理も2020年では遅すぎる。処理設備(Sarry)の設置は急げないのか。
松本(東京電力):p. 33に示したようにSarryの増強は2018年になる。凍土壁の閉合で滞留水処理全体の短縮を図っているが。
更田(規制委委員):Sarryは旧図制作であり、時間がかかるのはおかしい。規制委は地下水対策ではサブドレンが主役であると2年前から言っている。p. 19に示されているサブドレン増強の工程は遅すぎる。凍土壁は東電の「重層的対策」の主張を受入れたものであり、サブドレンを中心に検討を急いで欲しい。
松本(東京電力):流入量減少のために山側凍土壁の閉合もやらせて欲しい。
更田(規制委委員):凍土壁は海側壁からの逸水量が70㎥/D以下になったら「ゴー」
ということで前回合意した筈だ。
山本(外部専門家):東電は凍土壁で地下水が止まると考えているのか。
松本(東京電力):ゼロか100かではなく、地下水制御に効果があると信じている。
今井(規制庁):p. 21で、山側を閉めないと4m盤水量は減らないということか。
松本(東京電力):そうではないが、山側を閉めないと建屋周辺に地下水を貯めてくみ出しているとも云える。
更田(規制委委員):宿題は3つある。①復水器 ②Sarryの工程 ③サブドレン強化日程
関連して以下の議論が行われた。
更田(規制委委員):ALPS処理済水に関する会議がエネ庁・東電・地元で開かれたのか。
湯本(エネルギー庁):開かれたが、地元の要望もあって継続審議になっている。
更田(規制委委員):東電はALPS処理済水の処理責任は東電にあると考えているのか。
松本(東京電力):そう思っている。「答」そのものはしばらく時間を頂きたい。
蜂須賀(外部専門家):当該会議でも東電はエネ庁の顔色を伺っていて、自己の責任で発言しているとは感じられない。
百瀬(東京電力)が、関連資料2-1「陸側遮水壁の状況」に基づいて説明した。
百瀬(東京電力):9月の台風や大雨の影響が流入量に大きく影響を与えていて、遮水効果を「明言」するには適切な時期でなかった。
この後、参考資料3「2号機TIP案内管付着物の簡易金属分析結果について」について議論が行われた。
更田(規制委委員):この資料は2013年11月のもので、結論は「放射性物質検査が敷地内で出来ず、分析を一旦終了」となっている。当時の判断ではあるが、本末転倒であり、現・規制委は分析の条件を整備するので、必要なら再提出して欲しい。
(所見):
(1) 復水器については、これまでにも触れられたことはあったが、「汚染量の80%」というデータは初見であり、前回までの地下水処理の議論から方向転換された感がある。1号機での復水器内汚染水の汲み出しが計画中とのことだが、2,3号機の汚染環境では簡単に着手は出来ないだろう。
(2) 凍土壁の効果については9月の大雨で評価が延期された。
(3) 構内のタンク設置状況から見て、ALPS処理済水の処分は時間の問題になってくるものと思われるが、「希釈放流」を言い出せる組織(東電を筆頭に)がなく、無用の顔の見合わせが続いている。
以上