特定原子力施設監視・評価検討会 第43回会合(2016年6月2日)傍聴メモ
特定原子力施設監視・評価検討会の第43回会合が6月2日に開催されました。
会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらを参照してください。また、会議の映像もすでに配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/
以下は、福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、T.M.氏独自の視点からのものです。
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注:資料は4議題について準備されたが、時間の制約と内容の重要性から「地震及び津波対策」「陸側遮水壁の状況」の2議題に絞って説明と討議が行われた。
課題1.地震:津波の対応状況(資料1)
立岩(東京電力)が、前回(第42回)での討議を踏まえ、リスクの起こりやすさと影響度を図示し(p. 2)、それぞれの対策を説明した。
この後、質疑が行われた。
更田(規制委):資料2ページの表にある水関係は、トレンチ水(処理済み)<タンク内汚染水<地下滞留汚染水であり、本来「貯水設備」でない建屋内汚染水の除去または低線量化と建屋開口部の補強が重要である。想定地震・津波に対して使用済み燃料は十分安定を保てるし、デブリの温度(p. 24)500〜600℃はデータが古すぎる。現在は温度は低下している。
松本(東京電力):建屋内汚染水は事故後の約10万トンから、現在は6万トンに減少しており、また冷却水循環によって線量も低下している。
高坂(外部専門家):地元としては900Gal地震に対してデブリの安定性評価が必要である。
更田(規制委):デブリが臨界に達する条件は考えづらいが、東電でシナリオを示すべきか。
安井(規制庁):p. 2の表で、縦軸をハザードポテンシャル(HP)のままにして、横軸に時間を取って、事象毎の対策によりHPがどう低減するかを示すのも一策。
(所見:汚染水から抽出した放射性物質含有固体またはスラッジ(容器補完)についてHP評価が低いことに疑問を感じる。海水冷却方式原発の重大事故で初めての汚染物質であり、長期安定保管に独自のR&Dを必要と考えるから。なお、p. 2の表で安井氏の言うように横軸を時間とするとHPは漸増する。)
議題2.陸側遮水壁の状況(資料2)
中村(東京電力)が、全96ページの大部の資料に基づき、海側凍土壁の凍結状況と水位差の発生状況と、フェーズ2(山側凍土壁着工)計画について説明した。同時に、一部未凍結個所についてモルタル状物質流し込みによる補助工法実施の承認を求めた。
更田(規制委):海側凍土壁の工事進捗状況から「補助工法」の採用は承認せざるをえない。山側についても、「温度低下」作業の開始は認めるが、フェーズ2への移行承認ではない。「水位差」や「地中温度状況」の確認で「壁」ができているとは判断できない。4m盤からの汲み上げ水量は減っていない(p. 33)。
松本(東京電力):p. 37のように、汲み上げ水量は50%海側遮断での予測水量に合致している。フェーズ2実施により、海側100%、山側50%遮断で、4m盤汲み上げ量は半減する(p. 38参照)。
更田(規制委):予測水量の設定条件によって類似の答えにはなりうる。証明とは言えない。
高坂(外部専門家):効果は非定常、未凍結部の流速が上がり、流入量は凍結面積と相関しない。「海水配管トレンチ」でも凍結ができなかったし、凍土壁の面積は桁違いだ。
松本(東京電力):東電としては、「効果発現」の端緒となるデータを示したつもりだ。凍土壁による完全止水はできると確信している。
山本(外部専門家):フェーズ2移行後の確認事項(p. 39)は、補助工法採用などで実態から外れている。
安井(規制庁):補助工法を実施して4m盤の汲み上げ量が減らなければ、凍土壁で止水できなかったと判断してよいか。
松本(東京電力):その通りだ。
高坂(外部専門家):海側には配管トレンチ下などの礫の存在以外にも凍結に困難な場所があるが。
更田(規制委):補助工法の効果をできるだけ早く確認して、次回の検討会を開きたい。いつになるか。
松本・中村(東京電力):工事が2週間、効果確認が2週間で、1ヵ月後に報告できる。
蜂須賀(外部専門家):「凍土壁の定義」を示して欲しい。「凍結しない」との報道は住民に不安を与えている。
松本(東京電力):ご心配をかけ、申し訳ない。次回に分かりやすく定義したい。
(所見:「凍土壁」は鹿島の発案、東電の企画、エネ庁の採用で進んできたが、当初から実現を疑問視する声もあった。規制委は「1Fの特定原子力施設指定」以降に評価に加わった。「配管トレンチ凍結止水」の失敗もあり、監視・評価検討会でも厳しい見方が増えている。東電は提出資料を「量」から「質」に切り替えるとともに、凍結の評価については「流速」測定も加えるべきではないか。また、同環境の原発重大事故の先行事例として、逐次対応ではなく本質的な検討が望まれる。)
議題3(3号機使用済み燃料プールからの使用済み燃料等の取り出し作業)と議題4(多核種除去設備処理済み水のタンク貯留が廃炉作業のリスク低減に与えている影響)の2議題については資料配付のみで、時間切れのために審議できなかった。
その他: 昨日、構内北側のダストモニタ(MP2)がビスマスを低線量検知したが、周辺MPに異常値はなく、現在詳細分析注である。センサあるいは通信ケーブルの以上と推定している。
以上