特定原子力施設放射性廃棄物規制検討会の第1回会合(2015年12月4日)を傍聴しました。以下は、T.M.氏が作成した傍聴メモです。
この特定原子力施設放射性廃棄物規制検討会は、「放射性廃棄物」に的を絞った検討会として、特定原子力施設監視・評価検討会からスピンアプトして発足しました。
「特定原子力施設監視・評価検討会」では有識者がリスク管理を中心に選ばれていましたがこの「放射性廃棄物規制検討会」では原子力工学の専門家が多数を占めています。
この検討会の第一回目の会合が2015年12月4日に開催されました。
なお配布資料は規制委員会のサイトからダウンロードできます。また会議の映像もアップされています。
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_haiki/index.html
このメモでは資料から離れた議論を中心に述べます。
議題1 検討会の趣旨、議題2 検討会の具体的検討内容
1.規制庁の田中知委員から開会挨拶があった後、事務局から資料1(検討会の趣旨)、資料2(検討会の具体的検討内容)について説明があった。
2.質疑
- 複数の有識者から、資料2で「処分方法については検討の対象外とする」との文言に疑義が提示された。
- 田中委員と事務局から、処分方法から入ると議論が拡散すると考えたとの回答があった。まずは「保管・管理」を第一の焦点としたい、処分の必要条件については検討会の検討範囲だが、方法の決定までには責任はない、との趣旨の回答だったが、文言の修正は検討することとなった。
- 所見:検討会参加者(とりわけ有識者)の責任の限界を示した文言とも取れるが、有識者が「検討範囲の制約」と受け取るのも無理はない。
議題3 1Fにおける放射性廃棄物の現状と今後の管理について
- 資料3−1から3−4について東電(石川真澄・廃棄物対策グループマネージャーから説明があった。説明内容としては、状態の変化が大きい瓦礫(固体廃棄物)が中心で、水処理二次廃棄物については数量説明が中心だった。
質疑
Q:瓦礫に土壌は含まれているか。
A:敷地内の剥ぎ取り土壌は含むが、全汚染土壌ではない。
Q:減容しても放射線量は変わらない、容積当たり高濃度化すると考えてよいか。
A:その通りだ。ここでは物量のみを集計している。
Q:固体廃棄物からの放射性物質漏洩について、「水」より「土壌」を計測すべきではないか。
A:具体化の方法を検討する。
Q:屋外保管で「ガス抜き」管を設置しているが、内部での偏りをどう評価しているか。
A:コールド試験の結果から設計し、温度監視で補完している。
Q:資料3-2の「工事発生瓦礫(32万m3)」のうち「その他28万m3)」は何か。
A:事故対策設備や事務棟などの撤去から発生するものを想定している。
Q:同資料の「建屋発生瓦礫」の発生量の根拠と汚染物質について。
A:3号機工事計画から推算した。現実には現場調査は不能である。汚染物質はCs中心と考察した。
Q:同資料にある「雑固体廃棄物焼却設備」の焼却対象物と汚染漏洩対策はどうか。
A:当面衣類(タイベックス等)の焼却から始める。バグフィルターの他、HEPAも装着する。
Q:資料3−4のpp. 2~4の「核種分析」は15年10月末で200件程度だが、今後の増強はどうか。
A:現在は核物質取扱規定上の制約で1F外へ持出して分析依頼している。17年度末には敷地内に分析設備設置予定で、年1,000件オーダーの分析が可能になる。
Q:説明の限りでも対象が多岐にわたっている。規制庁事務局で「マップ作成」をお願いしたい。
A:(事務局)了解した。
Q:廃棄物の物量が説明の大半だったが、汚染核種と汚染量の説明が欠けている。
A:今回の会合は初回であり、初参加の委員の方もおられるので、概要説明の積りであった。次回から個別に詳細説明をする。
議題4 HIC(多核種辞去装置から発生するスラリーの格納容器)の不具合と対策。
東電から資料4に基づき説明があった。不具合発生メカニズムの解明と対策立案を実施中であるとのことである。
質疑
Q:スラリー膨張による熱出力は? また、ドライ化の方向への検討は?
A:HICのスラリー保管の不安定性も考慮してドライ化の方向を検討対象に含める。
全体としての所見
「特定原子力施設監視・評価検討会」が1Fで発生する諸事態への逐次対応を求められることから、「放射性廃棄物」を単独の検討会としたことは有意義と考える。
今回の資料は包括・概括的なもので、初参加有識者への概要説明となっている。
それにしても「放射性廃棄物」について、核種と残留放射線量を明示しないのは雑に過ぎる。例えば、セシウム吸着塔682本(資料3−1、p. 36)は、Cs137を1015Bq/t含有(資料3−4、p. 6)している1F特有の高濃度放射性廃棄物であり、他と同列には扱えない。
次回に東電が提出する資料と当日の議論の内容を待ちたい。
以上