特定原子力施設監視・評価検討会の第37回会合が去る10月14日に開催されました。第36回会合が7月1日でしたので、実に3ヵ月半ぶりの開催となります。
会議での配布資料は原子力規制委員会のサイトに掲載されていますので、そちらを参照してください。また、会議の映像もすでに配布資料とともにアップロードされており、当日の検討会の模様をご覧いただけます。
http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/
以下は、福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT.M.氏による会議メモです。なお、メモの内容は会議での議論・資料をそのまま追ったものではなく、T.M.氏独自の視点からのものです。
議題1.2,3号機海水配管トレンチ汚染水対策工事の完了について(資料1)
- (東電説明)モルタルの積層注入により汚染水除去が完了。2号機ではトレンチ内の連通可能性残りT/B出口の凍結止水継続。3号機は完了。4号機は他工事の影響で汚染水60m3が残存、年内作業完了予定。
- (質疑)
2号機への地下水流入のT/B汚染水連通の可能性について質問があった。東電は、地下水位はT/B汚染水水位より高く可能性は低いが念のためにT/B出口の凍結止水を継続すると回答した。
更田委員から、p6 ※1で「トレンチ対策でCs線量が1/10になった」としているのはミスリードであり、建屋内汚染水処理も含めると全体として1/2ではないか、との指摘があった。汚染のinventoryを明示して管理状態の評価をすることとの見解を示した。
議題2.サブドレン他、水処理施設の本格運転及び海側遮水壁閉止の状況について(資料2)
(東電説明) ①山側サブドレン水位を段階的に6.0mまで下げて24時間稼動が可能になり、9/14以降500~900m3/Dの排水実績があった。②海側(鋼管)遮水壁の打設を9/22に完了し、現在継手部へのモルタル充填施工中である。③サブドレン水質に特段の変化はないが、事故時の排気塔からの汚染でN0.18,19、R/B,T/Bに近いNo.40ドレンの高汚染であることは従来通り。
(質疑)
(更田委員) p. 7(1号機)、p. 26(2号機)ともに山・海側水位差が大きい(水流が止まっていない)、サブドレン稼動での建屋流入量の変化。
(安井審議官)山・海水位水平化が以降の作業(陸側遮水壁稼動)の前提となる。
(東電)流入量はサブドレン稼動で350~400m3から200m3/Dに減少した。水位差の平準化は理論的には可能だが、汚染など各ドレンの状況で稼働中。従前提出したシミュレーションとの相関は近日中に提出する予定である。
議題3.陸側遮水壁の進捗状況報告(資料3)
(東電説明)①全ての凍結管・凍結プラントの設置を完了した。②建屋滞留水移送と計測手段の追加設置を完了した。③注水井性能の確認を完了した。④試験凍結:全18ヶ所で6月1日と8月13日に温度低下量を測定し、順調に凍結していると評価した。
(質疑)
(更田委員)東電の方針は、山側は止水を目指して実施し海側はやらないということか。凍結の個別データは了解したが、凍結とサブドレンの分担は水位水平化の寄与次第である。
(橘高委員)p. 32では温度低下量表示で絶対温度でなく、凍結しない個所もあるのではないか。
(東電回答)p. 41でみると0℃近傍に達している。従前の10m□実証試験でも問題なし。
(更田委員)凍土壁実施へのstep up条件の整備が必要である。①サブドレン効果の確定、②海側(鋼管)遮水壁の完全施工、③地下水汲み上げにより降雨の時に定数が小さくなる(影響が大きくなる)ことへの対策。規制庁でも凍土壁実施に向けたチェックリストの作成が必要である。
(東電発言)東電は汚染水減量を重視しており、山側遮水壁実施について規制委の判断が欲しい。
(更田委員)判断材料を提示せずに決断を求めるのは筋違いである。
(東電)発言を撤回する。
議題4.3号機使用済燃料プールからの燃料交換機取り出しについて(資料4)
(東電説明)3号機の使用済み燃料取出し(2017年度から実施予定)の第一歩として、燃料プールに落下していた燃料交換機(既設FHM)の撤去に成功した。工事前後の状態を報告。
(更田委員)燃料取出し作業が有人環境化する時点で規制委としても評価が必要となる。
議題5.1Fの監視・評価に係る検討体制の見直しについて(資料5)
(規制庁説明)敷地内の放射性廃棄物の安定的な管理を独立して検討する「特定原子力施設放射性廃棄物管理検討会(仮称)を新設し、現在の監視・評価検討会は少数参加者による効率的な監視・評価を図る。汚染水対策検討WGは廃止する。
(質疑)
(複数の有識者から質問)①燃料デブリの取扱。②格納容器・圧力容器の取扱。③地震・津波対策。④ALPS処理済水の処理。以上①~④の担当と検討方針。
(更田委員回答)①②は「廃棄物」側の検討課題も実質検討開始までには時間がかかる。③は既設検討会の課題で、地震については規制庁から東電に設問中。④のALPS処理済水安定貯留は既存検討会の課題であり、未来的方策については廃棄物検討会の課題となる。
その他、参考資料1及び2(いずれもタンク・管路からの漏洩問題)について、東電からの説明、福島県有識者及び更田委員からのコメントがあった。
総括所見
前回(36回・7/1開催)から3ヶ月を経ての開催だった。その間の事情についての説明はなかった。
前回から最も進捗が見られたのは「サブドレン本格運転」だが、東電が運転と排出の実施に重点を置いて説明したのに対し、規制委・有識者側は建屋の山・海側水位差が1.5~3.0mと水流阻止の効果が見られないことを問題視した。計画時のシミュレーションとの整合を問うのに対し、東電は個別ドレンの事故時汚染のばらつきから分析に暫時掛かると説明した。
山側凍結止水の実施を東電が迫ったが、規制委はサブドレン効果の検証・海側鋼管遮水壁の完成など手順と効果が未確認であるとして、温度低下実験は認めるものの凍土壁構築は認めなかった。
本検討会を縮小継続し、新たに「放射性廃棄物管理検討会(仮称)」設置が発表された。
セシウム廃棄物(サリーからのゼオライト付着セシウム)は超高線量なので、ゼオライトの入った容器(鉛被覆の厳重なもの)のまま保管されている。しかしこの容器の耐用年数は半世紀未満であろう(それに対してセシウム濃縮廃棄物の無害化には1,000年単位の時間が必要である)。したがって、数十年のうちに新たな容器と格納方法(例えば、地中深くに粘土層を作って埋設)など、格納容器と保管環境の本質的な検討が必要である。専門的な検討のために「放射性廃棄物管理検討会(仮称)」の設置は妥当な処置だと考える。
しかし、検討会が結論に達するには「汚染水問題」よりは長い時間を要するであろう。これに対して、現在の検討会は逐次対応的な性質のものだと考えている。
以上
T. M.