特定原子力施設監視・評価検討会の第35回会合(5月22日)傍聴メモ

昨日、特定原子力施設監視・評価検討会の第35回会合の傍聴記を掲載しましたが、元福島原発行動隊(SVCF)の原発ウォッチャーを務めたT. M.氏がご自身のメモを提供して下さいました。昨日掲載した傍聴記はあくまでも文系人間の目から見たものですが、このT. M.氏によるメモはさすが長年技術畑を歩んでこられた方ならではの鋭い切り口を見せています。


配付資料・参考資料は規制委HPに掲載。資料から離れた議論についてメモします。

議題1:海水配管トレンチ内汚染水対策工事の進捗について(東電:資料1)

  • 「凍結止水後汚染水汲み上げ」から「モルタル充填置換による汲み上げ」に転換して。

進捗率59%。概ね順調に推移している。

  • 規制委事故対策室は「凍結止水」による実施計画を受取ったままで、施工完了後管理

計画と共に「実施計画」の再提出を求める。

(所見)汚染水くみ上げの目標に近づいてきた。管路に一部残る「水」が地下水なのか汚染水なのか曖昧な表現がある。

議題2:HIC上のたまり水発生の原因と対策の検討・実施状況(資料2)

  • まず4月29日に発覚したHICにベント孔がないものが334基発見されたとの報告。HIC上部のガス採取作業で分かったもの。ALPSプラント施工者が米国に発注したもの。
  • 「たまり水」はHICスラリーから水素ガスが発生しスラリー上部の滞留上澄み水を押し上げて発生すると現時点では判断。HIC表面線量と保管日数から点検優先順位設定。
  • 対策としてHIC上澄み水抜取り作業システムを構築中。
  • 有識者からは作業の被曝危険性や、放射線起因以外に光触媒効果による水素発生も考慮すべきなど意見多数。「ベントなしHIC」については絶句の雰囲気。

(所見)HICについてはALPS建設時に特に「容器強度」に相当の試験を行った。肝心の充填物からの水素の発生やベントなど安全面での検討に抜けがあることが初めて分かった。

議題3:滞留水貯留タンクエリアの堰設置状況

  • 東電の説明の後、更田委員から強い批判発言があった。「リスク管理面(放射線の危険性)から見るとRO濃縮水タンク1基の崩壊はALPS処理水タンク1000基以上の崩壊に値する。堰設置にしてもリスクの大きいDエリアの作業を優先し報告も順序付けるべき。」
  • 東電は更田発言に平謝りだったが、地元有識者から「ALPS処理水にもH3が含まれておりおろそかにして欲しくない」との発言があった。

(所見)更田発言はいわば劇場型のもので、全体の事故収束管理に(表向きは)PERTを使わないのは重要度の順序が分かることが地元を刺激するからだろうし、東電は面従腹背の態度にならざるを得ない。徹底した議論と合意が望ましいことではあるが。

議題4:建屋への地下水流入抑制策について(資料4)

  • 凍土壁(山側・海側)、サブドレン、地下水ドレン、海側(鋼管)遮水壁によるR/B、T/B汚染水管理についての中間報告。
  • 委員・有識者から部分凍結での挙動が不明、地下水流動変化について地図を用いた説明をして欲しいとの要請があった。また更田委員から、沿岸遮水壁が閉じられないことのリスクについてIAEAなどから疑念が出されているとの報告があった。。

(所見)凍結に伴う地下水流路・流量の変化が説明のなかにないことが疑問。全体像が見えてきていない。

その他

議題検討終了後、更田委員及び有識者から、「3号機使用済み燃料プールからの燃料取出しをめぐる諸問題(環境線量、作業の困難さ、建屋の脆弱性など)」、「1、2号機間スタック撤去計画」について今後しかるべき時に議題化したい、との発言があった。

以上

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