特定原子力施設監視・評価検討会の第35回会合を傍聴しました(2015/05/22)

先月に引き続き、特定原子力施設監視・評価検討会の会合(第35回)を傍聴しました。

本日の議題は以下の4つでした。

  1. 海水配管トレンチ汚染水対策工事の進捗について
  2. 沈殿処理生成物貯蔵容器からの漏えいについて
  3. 汚染水タンクにおける仮堰の運用について
  4. 建屋への地下水流入抑制策について

1.海水配管トレンチ汚染水対策工事の進捗について

この工事は海水配管トレンチに滞留している高濃度の汚染水を除去するとともに、タービン建屋から流入してくる汚染水の通り道を遮蔽する工事です。

本日の報告によれば、工事は概ね順調に進捗しているとのことでした。

2.沈殿処理生成物貯蔵容器からの漏えいについて

この問題は先月(4月)、ALPSによる汚染水処理などで生成したスラリーを保管している「高性能容器」(HIC)の蓋部分にたまり水が発見された問題です。今後、汚染水処理において増大し続けるであろうスラリーの保管容器の信頼性が揺らぐことになれば深刻な問題になります。

東京電力の推定によれば、たまり水が生じたのは、容器内でガスが発生して液の水位を上昇させたためではないかということです。

たまり水の発生が本当にこうした原因によるものであり、「高性能容器」(HIC)の劣化によるものでないとすれば一安心ですが、今回の事象は図らずも別の問題点を浮かび上がらせることとなりました。

HICのたまり水に関して東京電力が本日の会議に提出した資料「『HIC』上のたまり水発生の原因と対策の検討・実施状況」には、A4一枚の「別添」が付けられていました。それによると、

  • 4月29 日、協力企業が当該HICを点検した際に、蓋部分に本来あるべきベント孔がないことを確認し、東京電力に報告した。
  • 5月21日、検討会に向けて資料作成をする中で、データに欠損があることに気がつき、担当部署に確認したところ、HIC蓋ベント孔がなかったことがその理由であることが判明した。

とのことでした。

つまり、4月29日、協力企業がHIC蓋にベント孔がないことを発見して東京電力に連絡したにもかかわらず、一月近くにわたってその情報が社内で共有されず、別の部署では検討会の資料を準備する中で初めてその事実を知った、ということです。資料作成担当者は翌日の会議のために慌ててA4一枚の「別添」を作成したものと想像されます。

いずれにせよ、東京電力の社内での情報共有のあり方に疑問を生じさせる一件でした。

3.滞留水貯留タンクエリアの堰設置状況

東京電力では、一昨年夏に起きたタンクからの汚染水の漏えいを教訓に、漏えいがあった場合でも被害が拡大しないよう、タンク基礎の外周にコンクリート製の堰を設置しています。ただタンク完成後速やかに汚染水を受け入れて利用できるようにするため、この本格的な堰(本堰)の完成前に鋼製の堰(仮堰)を設置しています。本日の報告はその仮堰設置工事の進捗状況に関するものでした。

東京電力の担当者が説明を終えるや、座長役の更田豊志・原子力規制委員会委員がいつになく厳しい口調で「この報告に今日は一番腹を立てている」と述べました。会場内の空気がピーンと張り詰めました。

更田委員の怒りの理由は、「なぜリスクを考慮しないのか」というものでした。

仮堰工事が行われているタンク設置エリアには、きわめて危険度の高いRO濃縮水を貯留しているタンク群からなるDエリア、ストロンチウム処理水を貯留しているKエリア、ALPS処理水を貯留しているJエリアがあります。東京電力の担当者はこれらのエリアをいわば「平等に」扱って説明を行ったのですが、これが更田委員の怒りを買ったのです。

「RO濃縮水のタンク一つから汚染水が漏れたら、それはALPS処理水のタンク1,000基分に相当する。ALPS書類類とROをいっしょくたにして議論することが理解出来ない。東京電力はリスク管理と言っているが、本当に分かっているのか」

と、その批判はきわめて厳しいものでした。

ということで、東京電力が抱えているまた別の問題点が浮き彫りになった一幕でした。

4.建屋への地下水流入抑制策について

今日最後の議題は、前回の会議で東京電力が提起した陸側遮水壁の閉合問題です。

現在、サブドレンで汲み上げた地下水を海に放出することができないため、海側遮水壁を閉じることができないままになっています。そのため毎日、大量の汚染した地下水が港湾内に流出しています。

サブドレンで汲み上げた水の放出について地元の了解を得られないままになっている中、東京電力は前回の検討会で代替案を提示しました。それは、サブドレン稼働に先行して、陸側遮水壁(山側)と海側遮水壁を同時に閉合する、というものでした。

この代替案について更田委員はきわめて懐疑的でした。いったん閉合したら後戻りできなくなる。その時に地下水を本当にコントロールできるのか、というのが更田委員の最大の疑問です。

本日の会議で東京電力は再度この代替案を提示しましたが、見たところ更田座長は問題として取り上げることにきわめて消極的で、ほとんど議論がなされませんでした。

以上簡単ですがご報告です。(M.T.記)

●この特定原子力施設監視・評価検討会は誰でも傍聴できます。会議開催の数日前に規制委員会のサイトに会議の案内が出ますので、メールで申し込みます。検討会のページは以下の通りです。

http://www.nsr.go.jp/disclosure/committee/yuushikisya/tokutei_kanshi/

このページには会議議事録、配布資料のほか会議のビデオも掲載されるので、当日傍聴できなくても会議の模様について詳細に知ることができます。現在、何が問題になっているのかを理解する上で貴重な情報を提供してくれる会議です。

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