特定原子力施設監視・評価検討会を傍聴しました

4月22日(水)、特定原子力施設監視・評価検討会の第34回会議を傍聴しました。

この日の主な議題は以下の4つ。いずれも重要な問題です。

(1) 海水配管トレンチ汚染水対策工事の進捗について
(2) ボックスカルバート内の高性能容器蓋外周部のたまり水について
(3) 建屋への地下水流入抑制策について
(4) K排水路に係る対策の進捗状況について

(1)海水配管トレンチ汚染水対策工事の進捗について

2号機から4号機の海水配管トレンチには高濃度の汚染水が滞留し、リスクとなっています。東京電力はリスク軽減のためにこの海水配管トレンチの汚染水を抜き取り、トレンチを閉塞することを計画しました。

Trench

pdf資料「廃炉・汚染水対策等に関する東京電力の取組」

しかし、タービン建屋と海水配管トレンチの接続部は、壁によって仕切られてはいるものの配管等が貫通しており、タービン建屋と海水配管トレンチの間で滞留水の行き来があることから、汚染水を除去するにあたり、まずはタービン建屋と海水配管トレンチの接続部を分離することとしました。そのために取られたのが、凍結による止水でした。

2014年4月、削孔して凍結管を打ち込み凍結を開始しました。当初は一月ほどで完了するはずでした。しかし運転を開始しても水は完全に凍らず、7月、東京電力は追加措置として氷やドライアイスを大量に投入して凍結を促進させようとしましたが、完全に止水することはできませんでした。

2014年10月、東京電力は止水はあきらめ、トレンチ内部に流動性の高いセメント剤を入れて埋めながら汚染水を抜き取る方法に計画を変更しました。

この日の東京電力の報告はこの工事の中間報告でした。それによると、

  • これまで、トンネル・立坑の充填を行い、約6割の汚染水を除去し、充填材料に置き換えが完了した。
  • 立坑充填前の状況に比べて、最大で8分の1程度にまで連通状況は改善したものと判断している。
  • 内部は十分に充填されたものと考える。
  • トレンチ内外の水の行き来は建屋以外とは基本的にない(雨水の流入はあるが地下水との接触はない)と評価。
  • 滞留水の除去と会わせ、地盤・海洋の汚染リスクは大幅に低減できたと考えられる。
  • こうした成果を踏まえ、2サイクル目の充填を実施することにより更なる改善を目指す。

委員とのやりとりの中で浮かび上がったのは工事の難しさです。

  • 海水配管トレンチの水平部(トンネル)を隙間なくセメントで埋めるのが難しいことは予想されたが、垂直な立坑でも完全に充填しきれない。その結果、建屋や立坑間では連通性が残ってしまっている。
  • セメントは固まると収縮してひび割れや隙間ができてしまう。収縮を押さえるために膨張剤を混合するなどの対策を講じているが、収縮を避けることはできない。

委員からは次のような意見や疑問が出されました。

  • タービン建屋と立坑間の連通は何とかできないのか。
  • 地層の方に汚染水が行っていないかどうかモニタリングをした方がいい。
  • 連通は本当にタービン建屋だけなのか。
  • 立坑がちゃんと埋まらない理由が分からない。
  • 立坑を埋める方針を維持していいのか。

最後に座長の更田委員から、立坑をすべて埋めてしまうと監視ができなくなるので、海側の立坑の充填はなるべく後ろ倒しにしてほしいとの要望が出された上で、2サイクル目に向けた施工方針が了承されました。

(2)ボックスカルバート内の高性能容器蓋外周部のたまり水について

多核種除去設備(ALPS)やその前処理設備においては「水処理設備二次廃棄物」と総称される廃棄物が発生します。炭酸物沈殿スラリやセシウム吸着剤などです。これらの廃棄物は「高性能容器」(HIC)と呼ばれる容器に入れられて「使用済セシウム吸着塔一時保管施設」のコンクリート製ボックス(ボックスカルバート)に保管されます。

3 月30日から31日にかけて、ボックスカルバートの床面ならびにHICの蓋周辺にたまり水があることが発見されました。

発生する廃棄物を保管している施設で、容器の周辺部と蓋にたまり水があることが確認されました。

スライド1

pdf資料「ボックスカルバート内の高性能容器蓋外周部のたまり水について」

その後、全1354基のうち、特に高線量のスラリーを保管したHICや保管機関の長いものなどを考慮して103基について調査したところさらに10基でたまり水を確認しました。

たまり水の原因についてはまだ特定できていません。東京電力はスラリー内で発生したガスによりHIC内容物の液位が上昇し、たまり水の発生に至った可能性があるとしています。

委員からは、ガスの中にはCOが多いことから労働災害が起きないように十分注意して作業するようにとの指示がありました。また容器が放射線によって劣化するのではないかとの危惧が示され、二次廃棄物の処理・処分について今後長期的な研究が必要であるとの指摘がなされました。

(3) 建屋への地下水流抑制策について —各対策の実施手順と水位管理

東京電力が「サブドレン計画」に代わる代替案を提示しました。

東京電力の推計によれば、現在、海側遮水壁の開口部からは毎日290㎥の汚染された地下水が海へ流出しています。海側遮水壁を閉合することができないのは、遮水壁の内側(陸側)で地下水を汲み上げることができないからです。地下水を汲み上げずに遮水壁を閉じてしまうと、地下水の逃げ道がなくなって水位が上昇し、土壌に含まれる放射性物資 と混じり合って汚染されてしまう可能性があるからです。

当初、東京電力􏰁は、「サブドレン」と呼ば􏰂れる陸側􏰀井戸などから地下水を汲み上げた後、これを浄化し、海に流す計画でした。 しかし今年2月、K排水路から高い濃度の􏰀汚染水が海に流れ出していながら東京電力が適切な対応を取っていな かったことが明らかになり、福島県漁連は納得できる説明があるまで「サブドレン計画」を認めないことを決定しました。こうし て海側遮水壁􏰀の運用を開始できない状態が続いています。

この日、東京電力は、サブドレンを稼働させる前に、陸側遮水壁(山側)と海側遮水壁を同時に閉合するとの代替案を提示しました。これにより建屋に流入する地下水量を減少させ、同時に海への流出量を減らすことができるとしています。

これに対して委員からは、遮水壁だけで運用していけるとは思わない、サブドレインの運用が不可欠であり、代替案のシナリオは成立しないのではないかとの疑問が出されました。座長の更田委員からは「基本シナリオで行くことを希望する」との発言がありました。次回の検討会であらためて議論されることと思います。

(4)排水路の排水濃度低減対策状況について

高い放射線量が検出されていたK排水路での汚染源調査と、対策実施について東京電力から報告がありました。

座長の更田委員からは、排水路の清掃を行ったところ汚染濃度は大きく下がった、汚染源探しに力を注ぐよりも清掃作業をすることに努力したらどうかとの発言がありました。

以上です。

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